40代の日本人女性は今年6月、暗号資産での投資詐欺に遭い、2週間で1700万円分をだまし取られた。ジャーナリストの多田文明氏は「女性をだましたのはマッチングアプリで出会った犯罪組織の一員と見られる自称韓国人で、LINEの位置情報をたどっていくと、なぜかラオス。犯罪組織の送金アドレス(口座)を調べると総額7億5000万円以上の詐欺をしている疑いがある」という――。
向き合ってスマホを使用する男女
写真=iStock.com/metamorworks
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マッチングアプリで出会った「自称韓国人」と「ラオス」の関係

マッチングアプリなどで出会って仲良くなった“異性”の相手に偽サイトへと誘導され、投資話を持ち掛けられる。その結果、大金をだまし取られる国際ロマンス詐欺の被害報告が増え続けています。

近ごろ、そうした被害を受けた方から「ラオス」という言葉を耳にするようになりました。これまでの被害の聞き取り結果では、犯罪組織は主に中国系の人物で構成されていると思われていますが、中国ではこの9月に暗号資産(仮想通貨)の全面禁止が発表されました。

もしかすると、犯罪組織の一部はいち早くそうなることを見越してビットコインなどの暗号資産での詐欺を引き続き行うために、拠点を隣国の東南アジアなどへ移したのではないかと懸念しています。

筆者の元にも被害報告が寄せられています。

ある40代の日本人女性は今年5月にマッチングアプリで、自称韓国人の男性と出会い「Poo***」という偽の投資サイトを紹介されて、最終的に計1700万円相当を国内の暗号資産交換所から送金しました。その後、男性からの連絡が途絶え、6月に警察署に被害届を出し、送金記録などを基に捜査してもらっていました。先日、その答えが警察からありました。

「犯人のLINEのIPアドレスと電話番号をたどったら、ラオスでした。しかしラオスに関しては、日本の警察では何も打つ手がないので、これ以上捜査はできません」

女性は、「IPアドレスはカムフラージュされて、偽装されているのではないか?」との疑いを持っています。IPアドレスとは、インターネット上の住所にあたるものです。詐欺グループの一番のリスクは警察による逮捕です。それゆえに、詐欺を行っている場所を探られないために、偽装を施すことも考えられます。

不正注文検知など、不正対策のサービス提供を行っている、かっこ株式会社(東京都港区)に、今回のIPアドレスの精度について確認すると「IPアドレスを基に居場所を特定しようとしたときの精度は、これまでの当社の経験でいえば60%程度だろう」とのことでした。

となれば、この女性が言うようにアドレス偽装の可能性もあります。ですが、考えようによっては、60%も精度があるわけで、ラオスなどの東南アジアに拠点があることも否定できません。実は数カ月前にも、ある手法で詐欺師の携帯電話の位置情報を探ってみた被害者がいましたが、やはり「ラオスの緯度と経度が出た」と聞きました。

今、この40代女性はラオスの日本大使館を通じて、現地警察に連絡を取る方法がないかを探っています。