英米圏では事実認定を重視し、日本では犯人捜しを重視する

医療事故の多くは、個人の過失よりも、病院内の運用上の問題点からエラーが発生し、チェック機構をすり抜ける「システムエラー」から発生するといわれている。

日本の冤罪や誤鑑定は、一般に、法医学者の人材難と解剖件数の少なさから生じると考えられているが、刑事司法に従属する死因究明制度のシステムエラーによると考えられる。英米法圏諸国の死因究明制度と比較してみよう。

英米法圏諸国では、各地域の法曹(コロナ―)、または、法医病理医(メディカルイグザミナー、米国都市部)の主任が死因究明全般を指揮している。そして、コロナ―は、鑑定や捜査の情報が揃うと、公開法廷で、関係者に証言させつつ、「事実を認定する」。

そして、事実に基づいて、死因と死の態様(自他殺、事故死、病死などの別)を評決し、死亡証明書(日本の死体検案書)を発行する。全ての死因究明情報は、公開が原則である。

これら、死因究明担当の行政官は、終身職で専従であり、その直属の捜査官も、看護師、救急隊員の経験者を多数含む終身・専従者である。このように、英米法圏諸国では、経験を積んだ専門家が「公の場で事実を認定し、事実に基づいて死因を究明する」。

この原則が、日本にはないため、日本で冤罪や誤鑑定が発生しやすいのである。

専門家とのコラボとデータベースで死因究明に取り組むオーストラリア

死因究明には、医療の知識・経験、そして、日常的に医療専門家に客観的な意見を聴けるシステムが求められる。

オーストラリアのビクトリア州(州都メルボルン)では、コロナ―事務所と法医学研究所(検案・解剖機関)が同じ建物の中にあり、異なる部局の多職種の職員たちが一緒に死因を究明している。

人口450万人ほどで年間1000件ほどの救急・医療関連の全死亡例のカルテ等を、この施設に常駐する看護師・医師のチームがチェックし、週1回の検討会において、コロナ―、法医と議論をし、各々の実務に活かしている。さらに、ここで得た警鐘事例の情報を、常時、医師にフィードバックしている。そして、コロナ―は、事故の再発防止策を関係機関や社会に提言している。

なお、オーストラリアには、全国的な法医解剖データベースがあり、上記の関係者に加えて、登録した学術関係者がアクセスし、実務・学術の向上とともに、事故の再発防止に体系的に利用している。

これに対して、日本の死因究明制度は、「事実認定より犯人探し」が優先される制度である。具体的には、死因究明の統括責任者がおらず、関係諸部署間のコミュニケーションが分断されており、担当者の専門性が担保されておらず、日常、医療専門家の意見が十分聴取できない。