自営業者の取引として200万円の損失は大きく、それを補う利益を出すためには利益率が5%としても4000万円の売り上げが必要だ。大口の取引を行う際には、現場を見ることがいかに重要か。きれいな登記簿も見ようによっては怪しく、定量分析だけでなく、定性分析も必要、という教訓である。これは会計についても同じことだ。

社名変更にかかるコストを損益計算書に反映させると・・・・・・

社名変更にかかるコストを損益計算書に反映させると・・・・・・

さて。松下では、社名変更によって看板のかけ替えなどが必要となり、概算で300億円のコストがかかるという。
損益計算書で示すと図のようになり、今後1~2年で営業利益を300億円程度減少させることになりそうだ。

ただし一方では、広告宣伝費の効率化が期待できる。松下電器という社名に40億円、ナショナルブランドに160億円かけていた計200億円の広告宣伝費をパナソニックブランドへ投下できることになり、「集中宣伝効果」が生まれる。

営業利益を国内、海外で比較すると、海外の利益貢献度は売り上げから見て低い水準に留まっている。海外でのシェア拡大、収益性向上のため、国内300億円のコストをかけてでも社名変更はメリットが大きい、という判断だろう。

優良企業の社名にはブランド価値があり、無形財産として計上すべきという議論もある。評価が難しいこと、取得原価主義という会計の原則にそぐわないことなどから、実現は難しいが、社名が重要であることは間違いないだろう。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)