質実剛健、“壊れません”というコンセプト

同じ高級セダンでも、クラウンとカムリには大きな違いがある。クラウンはFR(=フロントエンジン・リアドライブ)、カムリはFF(=フロントエンジン・フロントドライブ)。FRとは、後輪駆動。最もポピュラーな前輪駆動=FFと同様にエンジンは前方についているが、シャフトで後輪に動力を伝達して駆動する。乗用車のつくりの根幹に関わる違いだ。

ここに、ボディの構造の違いが重なる。

「堅固なフレームにボディを載せた昔ながらの『フレーム構造』と、基本的に外殻のみでフレームがない『モノコック構造』の2つがあります。頑丈なフレーム構造に対し、スペースを確保しやすいのがモノコック構造。カムリはこれです。対するクラウンは、長年フレーム構造のFRを通してきました」

フレーム構造のFRを一言で言うと質実剛健、“壊れません”だ。クラウンのパトカーやタクシーが数多く見かけられた理由はそこにあった。

デジタルな車のデザイン
写真=iStock.com/Peshkova
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融通の利かなさがネックに

「その堅牢頑丈というコンセプトゆえに、最新技術にも確実な耐久性があるかどうかを、クラウン開発者がいちいち見てから搭載している感じがありました。その融通の利かなさがネックになった。最新技術が最初からオプションで付いているドイツ車に対し、クラウンのオプションが後付けのオーダーメイドだったのも、運命の分かれ目だったかもしれません」

実はFR自体の“頑丈”イメージは、高級車にFRが多かった時代の名残り。FFとの強度の差はない。むしろFRはFFより部品が多くコスト高だ。かつ昔は運転のフィーリングは双方でまったく違っていたが、今は電動パワーステアリングにさまざまな車体制御がてんこ盛り状態なので、ほぼ見分けはつかなくなっている。

となると、車内がずっと広くて安価なFFに買い手が走るのは当然だ。クラウン同様に堅牢FRのイメージが強かったBMWですら、というよりだからこそ、どんどんFFに転じていったのは、ちゃんと理にかなっているのである。