「車椅子に座った状態でかっこよく見えるシルエット」

アシックスはポディウム(表彰台)ジャケット、シューズなどを担当するゴールドパートナーだ。パラリンピックの選手の衣料、靴にも工夫を凝らしている。語るのは同社常務の松下直樹だ。

「パラリンピアンのために特化したのはポディウムジャケットとパンツにおいて、車椅子専用シルエットのジャケットとパンツを日本パラリンピック委員会(JPC)と一緒に開発したことです。

パラリンピックのポディウムジャケット
写真提供=ASICS
パラリンピックのポディウムジャケット

ポディウムジャケットですけれど、車椅子の操作時に手首とタイヤが当たり、手首の部分に汚れや破損につながる可能性があります。ですから、手首の内側部分に強度の高い生地を配置して、汚れが目立たないように、破損しないようにしました。

パンツは車椅子に座った状態で、すっきりとかっこよく、そしてアスリートとして強く見えるシルエットにしました。

股上を短くして、お尻まわりにゆとりを持たせる。そして、履き口に前後差をつけました。そうすれば座ったときの前側のだぶつきが少なくなり、背面は通常より高いことから前かがみなどの動作で肌やインナーの露出が軽減されます。加えて、パンツの総丈を長くしました。そうすれば足首の露出がすくなくなります」

ポケット、履き口、ベルト…くふうがたくさん

「また、パンツのポケットはファスナーが車椅子の側板にあたりケガをする可能性があることから、ファスナーを外し、座った姿勢でポケットをつかえるように位置を変更しました。

細かいところですけれど、ベースの表彰台パンツからデザインと機能をできるだけ変更せずに使いやすさを高めることは選手の要望であり、それを形にすることは日本代表選手団の一体感を高め、選手のチカラになると思っています。パラリンピアンの方々にもメダルを取っていただき、表彰台に上っていただきたいです。

あと、シューズは、表彰式などで着用するシューズと選手村の滞在時に着用できるスポーツサンダルを納品しました。シューズは着脱をしやすいよう、ベロ部を引き上げた際に履き口が通常のシューズに比べて大きくなる構造にしています。

サンダルは義足アスリートや車椅子アスリートが着用できるように、着脱式のベルトを搭載し、知らないうちに脱げてしまうようなことがないようにしました」

スポーツウエアは日々、進化している。同社が製作したオリンピック・パラリンピックのポディウムジャケット、Tシャツのレプリカは販売好調だ。それが売れるのは人気に便乗しただけではなく、先端技術が織り込まれているからだろう。

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