パラリンピックにAOKIが送ったメッセージ
オリンピックが熱狂の大会だとすれば、パラリンピックは共感の大会だろう。
両腕がなくとも、足で弓を引くアーチェリーの選手がいる。欠損していても、クールな表情で泳ぐ選手がいる。ラケットを口にくわえ、裸足の右足で球を投げ上げ、サーブする卓球選手がいる。
オリンピックは無観客でよかったが、パラリンピックは見に行って、スタンディングオベーションを贈りたい。そう思うのは私だけではないだろう。
紳士服チェーンAOKIの創業者、青木拡憲はパラリンピックに共感し、こんなメッセージを出している。
「パラリンピアンの皆さまが日頃よりなされているご努力は、並大抵ではなく、私の想像の域をはるかに超えているものだと思います。
そのご努力と大会にかける情熱に心より敬意を表します。ご健闘を心よりお祈りしております」
青木は長野県に生まれ、高校の時は陸上部だった。家が貧しかったから、大学には進学していない。高校を出てからはたったひとりでスーツの行商に精を出していた。そんな時、かつての東京オリンピックのチケットをもらい、国立競技場で陸上100メートル決勝を見た。以来、57年間、東京大会の開催を願っていた。AOKIは公募を経て、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式服装を担当した。
「パラリンピアンだから」と身構えていたが…
AOKIは日本代表選手団の公式服装、つまり、入場行進で着用する開会式用のスーツと、結団式等で着用する式典用のスーツを、1人2着ずつ作製している。オリンピック・パラリンピックどちらの大会も同じデザインの公式服装で、しかも、選手全員、ひとりひとりのサイズを計測して仕立てている。
同社の最前線でオリンピック・パラリンピックに出場する日本代表選手団の採寸に励んだ小野太郎はパラリンピアンと相対して、気づいたことがあった。
「最初はパラリンピアンだからとこちらが身構えてしまっていたのです。必要以上に意識して、ぎこちない様子になってしまったかもしれません。しかし、やっているうちに気づきました。
オリンピアンだから、パラリンピアンだから、採寸の仕方が異なることはありません。同じアスリートです。アスリートの皆さまに満足していただけるような仕事をすればいいと思いなおしました。一般の方よりも筋肉が発達している部分があるだけです。障がいのある方ではなくパラリンピアン、イコール、アスリートとしての採寸を心掛けました。
ご要望やサイジングなど、細かなヒアリングをし、補正も多かったのですが、いいものに仕上がったと思っています」