――国内に約1400兆円ある個人金融資産のうち、過半は60歳以上の人たちの保有である。「オレオレ詐欺」は親が子供のためにカネを出す性質を狙ったものだ。「子供の面倒を親が見る」という現状に、浅田氏は疑義を唱える。

不景気でじたばたするのは、甘やかされて育った人間だ。「職がない」などと悲観的な論調が強いが、自分勝手な思い込みであることも多いのではないか。

50代以上の人間が再就職で困ることはあるだろう。だが、20代、30代が「就ける職がない。社会のせいだ」と主張するのは甘えにすぎない。実際、近所のスーパーには、「レジ係時給×××円」という貼り紙がある。結局のところ仕事を選んでいるだけだろう。カネはもちろん、自分に合った仕事をしたいという贅沢の結果なのだ。

我々が若かった頃、選べるほど仕事はなかった。実家は商家だったから、中学を卒業したばかりの若者を集団就職で何人も採った。無給で、休みは日曜日と盆と正月だけ。「若い衆」はいつも三畳一間に5、6人で暮らしていた。住み込みで飯は食わせてやる。給料がないかわりに、仕事を覚えさせてやるという奉公の時代である。こうした徒弟制度が昭和30年代まではあった。

私自身も貧苦に耐えた。9歳のときに家業が没落して、父母は失踪、離婚。あばら家で祖父と暮らすことになった。高校卒業後に自衛隊へ入隊。除隊後は職を転々とした。とりわけ結婚してしばらくの頃は土日もなく必死に働いた。昼は会社、夜はスナックと2つの仕事をしていたこともある。借金もずいぶんした。

いまは仕事を選んだうえで、共働きが当然という風潮だが、男なら「女房、子供は俺が食わせる」という気概をもっていてほしい。いまの植物性の若い連中にはそれが感じられないのが情けない。