不動産会社シーラホールディングスの杉本宏之会長は、2009年に自らが代表を務めていたエスグラントコーポレーションの経営破綻させたことがある。なぜどん底から復活することができたのか。『たとえば、謙虚に愚直なことを継続するという習慣』(扶桑社)から一部をお届けしよう――。
出資先の杜撰な工事が明らかに
以前に友人が経営する社員五人ほどの工務店に出資をした時の事です。
元々仕事は丁寧で価格も安く、当社の仕事を何度かやっていた事もあって、その会社に出資を決断しました。私達もせっかくなので良い会社を周りに広めたいという想いもあり、次々に取引先を紹介して行きました。
すると、元々の実力に加えて当社の信用補完が重なり、売上は2年で3倍以上となったのです。当初は素晴らしい資本業務提携が出来たと感じていました。そして、私たちもオフィスを移転する際に彼らに工事を任せることにしたのです。
社内には、大きな工事を立て続けに受注をしているので、工期が間に合うのか? という心配な声もありましたが、出資先で伸び盛りの企業に任せてみることにしたのです。
しかし、工事が始まってみると、杜撰な工事の実態が明らかになっていきます。工期も全く間に合う気配は無く、ついには工事中に職人さんが激務で退職し、工事が一旦止まるという事態まで起こりました。
私は不安になり、これを期に今までの取引先にもヒアリングをすることにしました。すると、私達の工事と同じく、クレームの嵐だった実態がわかったのです。急成長する会社に大きな歪みが生じ、人手不足や資金難などを放置したまま工事を受け続けていた事が主な要因でした。
ではなぜこうなるまで気付く事が出来なかったのか。それは、周りが私達との関係を気にして、工務店の社長にもクレームを言えなかったという顚末でした。「杉本さんの紹介だから言いづらかったけど、現場に社長は一切来たことがないよ」「見積もりを出す時も、スーツでも作業着でもなく派手な私服で来ていたけど」など、多くの取引先から寄せられる声に、私は大変反省をしました。