従来の掃除機とはまったく異なる原理で動く「サイクロン」や、羽根のない扇風機として注目を浴びた「エア・マルチプライアー」などの商品で知られる英国のダイソン社の創業者、ジェームズ・ダイソンさんとお話しする機会があった。

20年足らず前に立ち上げられた、イギリスの田舎に本社を置く企業がここまで成長した背景には、有無を言わさぬ技術とデザインの卓越がある。「サイクロン」にしても、「エア・マルチプライアー」にしても、ひと目見ただけで従来の商品とは違うというインパクトを与える。

だからこそ、掃除機や扇風機という、すでに成熟してコモディティー化したと思われていた市場において、他の商品よりも価格の高い「ダイソン・プレミアム」を成立させることに成功できた。

「ダイソン」という名前は、今や一つの力のあるブランドになっている。それでも、「ブランドには興味がない」とダイソンさん自身は言う。

「ある企業が消費者にどう評価されるかということは、その企業が最後に出した商品がすべて。ブランドなどは関係ない」

ダイソン社の組織上の人員構成で画期的なのは、「デザイナー」と「エンジニア」の区別がないこと。敢えて言えば、全員が「エンジニア」。「サイクロン」の発売まで、5500ものプロトタイプを作ったというダイソンさん自身をはじめとして、みんなが社内で常に何らかの技術に取り組み、実験を続けている。