日銀のコロナ対応は教訓を活かせた
このような金融拡大政策も、16年以降にはそのまま円安、株高には結びつかなくなった。(白川前総裁の考えていた)金融政策の働かない世界がほぼ実現したのである。マネタリー・ベースだけでは一国の貨幣量が統御できなくなったため、マネタリー・ベースと為替レートの相関関係を示すソロスチャートが働かなくなった。
けれども、貨幣の相互依存関係の重要性が失われたわけではないことが、新型コロナウイルスのパンデミック時に判明した。図1の右端に見るように、コロナ禍に対抗するために、米国はふたたびマネタリー・ベースを拡張した。これを放っておくと、日本が疫病の被害に加えてデフレで苦しまないとも限らない。
幸い、リーマン危機のときとは異なり、日本の貨幣供給は増加して、図1の推移は垂直でなく右上がりの方向を向いており、そのため円高は回避できた(図2参照)。現在の日米中央銀行は、貨幣の相互関係をしっかり理解しており、時差も克服してお互いに密接な連絡を取りあっていると伝えられている。