インターネットの世界に「神」があふれかえるワケ

第一に、取材先が言ったもっとも強い言葉を抜き出す方法です。架空の記事から見出しを作ってみましょう。それはたとえば、【「東京の犯罪は増え続ける」 防犯のプロが明かす地下鉄の死角】といったものです。あれ、どこかで読んだなという印象を持つ読者は多いのではないでしょうか。この手の見出しは、同質的な人々が集まる空間(たとえば政権支持/不支持、政策の賛成派/反対派)でシェアされるために必須の手法と言えます。人間の言葉は共感を集めるからです。ただし、リスクもあります。同質的な空間でシェアされる以上の広がりを見こみにくくなってしまうことです。

第二に、一時期大流行した「?」をフックに使う方法です。【なぜⅩは若者に支持されるのか? すべてを変えたYという革命】といった感じでしょうか。一体何が理由なのかな、と思わせてさらにワンクリックしたくなるという手法です。

第三に、感情を揺さぶる言葉を多用することです。革命もそうですが、激白、潰す、震える、独占、真相、真実、理由、激怒、酷評、激増、地獄、驚愕、損、得といった言葉を積み重ねることで、記事を読まないと乗り遅れるのではないかと思わせるのです。この手の手法で行き着く究極の言葉は「神」でしょう。インターネットの世界には多くの神々であふれかえっています。【SNSの女神が激白 フォロワー増の秘策に心震える】といった見出しです。

パーソナルな情報を見出しに盛り込む狙い

第四に、よりパーソナルな情報を押し出すというやり方です。年齢、性別、職業に成功・失敗、注目などを掛け合わせて見出しに盛り込む。【30歳、元販売員だった私がパリコレをレポートするまで】といったものです。情報を大量に盛り込むことで、20代のときにあるブランドの商品の販売担当だった人が、転職して販売していたブランドのコレクションレポートを書いたということがわかります。転職して成功した「私」が書いたものというサクセスストーリーに年齢や性別といった情報をまぶすことで、読者との共通点をやや強引に作り出す効果があります。

第五に、口語やネット上のスラング(俗語)や流行語を効果的に織り込む方法です。【「うっせぇわ」なんて言えない 究極のかまってニャンコ】のような見出しです。これもよく見かけましたが、流行語を使うことは諸刃の剣です。「そのとき」はいいのですが、数年後どころか数日後でも、流行語から古さを感じるようになってしまい、およそ長期間読まれるニュースになるのは難しくなります。短期の暇つぶし記事にも意義はありますので、割り切って使うのならば、記事と読者との距離感を近づける効果はあります。

流行は形を変えて繰り返されていきます。ここに列挙した五つのタイプは、読者のみなさんがすでに見たことがあるような見出しばかりではないでしょうか。