ロードサイド店の焼肉バブルが解消される

さて、そのようにして勝ち組になった焼肉業態ですが、冒頭申し上げたようなアフターコロナの時代になって、もう一度前提条件が変わると何が起きるのでしょうか。実は3つの大きなリスクが存在します。

第一に、アフターコロナで生活が元に戻り始めると居酒屋需要が回復します。居酒屋だけではなく、さまざまな飲食業態で需要の回復が起きます。以前と同じようにビールもお酒も飲めるようになりますし、終電間際まではしごをすることもできるようになるでしょう。

消費行動としては普通に元に戻ったということになるのですが、焼肉業態から見ればコロナ禍で他の業態から流れてきていた需要が、今度は他に流出してしまうように見えるでしょう。実際にそのような消費の逆流が起きるはずです。

ビジネスパーソンの中にはリモートワークを続ける人も残るとは思いますが、多くの社会人はまたオフィス街に戻ります。そうなることでロードサイド焼肉業態のコロナバブルは解消されることが最初に予想されます。

新宿ビジネス街
写真=iStock.com/fazon1
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普通の焼肉店で提供される「肉の質」が下がる

第二に、そのようにして世の中が回復することで富裕層需要や接待需要が元に戻ります。コロナ禍で人に会いたくて仕方がなかった金持ち層が、アフターコロナにはよろこんで会食の予定を入れ始めます。自民党のセンセイがたも、財界の首脳陣も、立場上これまで自粛を強いられてきた人たちはもう我慢する必要はないのです。

結果として高級和牛の相場は元に戻り、在庫余剰問題も解消されます。すると必ず起きる現象として、普通の焼肉店の牛肉の質が下がります。

これは過去何度も繰り返し起きてきた現象なのですが、焼肉やしゃぶしゃぶ食べ放題といった業態では、相場が下がる時期にはおいしい肉を安く提供することで人気を集める一方で、その後、相場が上がっても価格を上げることができません。

仕入れる肉の価格が上昇すれば、仕方なく、少しずつランクの低い肉を同じ価格で提供するようになる。そしてそのことに顧客は敏感に反応します。

「あのお店、前ほどはおいしくなくなったね」

というわけです。この現象はアフターコロナが始まって一年以内に起こるはずです。