人と同じはいや、面倒くさがり、構ってほしい

外苑西通りには、世界的なカネ余りの恩恵を受けた富裕層による高級外車が多く走っているが、イーロン・マスク率いる米国EVのテスラや、レクサスなど日本の高級車を見かける機会は少ない。

筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、高級外車を保有する数多くの富裕層と直接接してきた。こうした経験則からいえる富裕層の特徴として、①人と同じはいや、②面倒くさがり、③でも、構ってほしい、が挙げられる。

この特徴に沿って外苑西通りになぜ、欧州の高級外車が多く、テスラや国産高級車が少ないのかを考えてみると、①人と同じはいや、なので、必然的に母国市場で販売台数圧倒的に多い日本車は選択肢から外れることになる。レクサスのSUVラインや、トヨタのランドクルーザーやスープラ、光沢ある発色とデザインが洗練されたマツダ車や、スバル車の一部といった例外はあるものの、日本車は、まず、選択肢からは外れるのだ。人気のアルファードもこの界隈では社用車やハイヤーとしての利用が多く選択肢には入り難い。

車を買うだけではなく、サービスも楽しみたい

そして、こうした富裕層は、概してお金よりも時間が大切であり、②面倒くさがり、なので、至れり尽くせりのディーラーサービスは不可欠だ。レクサスの手厚いサービスが有名だが、高級外車の正規ディーラーは、同等かその上を行く。そもそもディーラーに赴くことも最初と納車の時だけなのかもしれない。納車、点検、故障などがあれば、担当セールスが訪ねてきてくれる。例えば、代車も、マセラティなら同格のマセラティ、ない場合でも、BMWやジャガーがあてがわれたりするのだ。時間を大切にし、面倒くさがりの富裕層にとって、手放せない、至れり尽くせりのサービスなのだ。

ディーラーとおしゃべりする顧客
写真=iStock.com/skynesher
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面倒くさがりの一方で、③構ってほしい、のが富裕層のややこしいところで、少々面倒くさい。富裕層は意外にも孤独なのだ。経営者であれ、プロフェショナルであれ、士業の先生であれ、家族はともかく、なかなか腹を割って話せる相手がいるようでいないのだ。よって、百貨店の外商、高級ブランド店の店員、馴染みの飲食店マスター、金融機関の担当者などは貴重な話し相手でもある。高級外車のセールスもここに入る。彼ら彼女らはこうした相手との会話ややり取りを含めたサービスを楽しみ、そこに対価を払っているのだ。

このため、テスラのようにネット経由でクリックして購入する方法は、合理的でスピーディであるとは分かっていても、そっけなくて、購入までのプロセスや購入後のやり取りを楽しめない。だから選択肢になかなか入らないのだ。