「公明党はああいう党なんだ」
前述のように、今回の都議選に自民と公明は選挙協力関係を結び、挑んだ。しかし2017年の前回都議選において、公明がタッグを組んでいた相手は都ファだった。
16年12月、都議会公明党は突如「自民党との信義が崩れた」と表明。それまで国政同様に協調していた自民との関係を断って、都ファと協力する道を選択する。そして17年都議選で都ファ・公明連合は圧勝。その後の都議会運営でもタッグを組みながら、さまざまな予算や条例を通してきた。
それが今年3月、公明は「小池都知事との関係は是々非々」と表明し、次期都議選に関して自民と選挙協力すると、再度の「手のひら返し」をしてみせたのである。
2016年7月の東京都知事選挙で、2位の候補に100万票差をつけて圧勝した小池氏。翌年に入ってもその圧倒的な小池フィーバーは収まらず、「このまま自民党とくっついて都議選に突入したら、公明党は壊滅する」との危機感から、当時の公明は自民との縁切りを選択する。
ただしその後、小池フィーバーは収まり、また東京五輪や新型コロナウイルス感染拡大などへの対応姿勢に関して小池都知事への批判が高まっていく状況を見て、公明は今春、小池・都ファをも見限った。
無節操としか言いようのないこの公明の態度だが、政界の反応は意外に静かだった。
「公明党とは、ああいう党なんだという認識がもう、よく悪くも一般的になってしまっている。大阪のほうの動きに比べたら、むしろ東京は大人しいくらいじゃないんですか」(ある自民党国会議員)
“無節操さ”の源流である大阪維新との関係
彼の言うように、近年の公明の無節操さの源流をたどっていくと、それは2010年代に入って大阪政界で台頭してきた大阪維新の会との関係に行きつく。
橋下徹・元大阪府知事を擁し、大阪で圧倒的人気を誇る維新の前に、大阪公明党は妥協的な態度をとり続けてきた。維新の看板政策である大阪都構想に対しても、迷走を重ねた末に賛意を表明。
現在では「大阪府政・市政において、もはや公明は維新の衛星政党と化している」(大阪の野党関係者)といった評さえ存在する状況になっている。この維新への対応をひとつの起点とし、近年の公明は何かの理念、政策に沿って動くというよりも、ただ「強いものに従う」だけの政党と化しているのではないかという疑念、批判が、政界には生まれているのである。
そういう露骨な生存本能に従った党運営をしていることの結果なのか、公明は確かに選挙では強い。今回の都議選でも、どの党もパッとした成果を上げられなかった中で、公明は23人の候補を全員当選させた。公明が都議選で候補全員を当選させたのは、これで8回連続である。
一方で、「今回の都議選で、公明は自分のところで精いっぱいだったのではないか」という観測も存在する。
当初の下馬評に比して、自民が意外に議席を伸ばせなかったところから出てきている意見で、つまり「公明は自分の選挙には熱心だったが、自民への協力はなおざりだったのではないか」という批判的な声が、自民関係者の一部から上がっているわけだ。