甘いドリンクを飲むほど喉が渇くという悪循環
ペットボトル症候群はどのようにして起きるのか。スポーツドリンクを例にして説明していきます。
喉が渇いたときにスポーツドリンクを多量に飲むと、スポーツドリンクに含まれる糖により血糖値が上昇します。実は、血糖値の上昇には喉の渇きを促進させる作用があり、そこで水代わりのようにスポーツドリンクを飲み続けると、さらに血糖値が上がり、喉が渇く、という悪循環を引き起こしてしまいます。
通常であれば、血糖値が上がると膵臓からインスリンが出て血糖値を下げていきます。インスリンには、食事などから摂取されたブトウ糖を細胞内に取り込み、エネルギーに変えるという働きがあり、そのため血糖値が下がるといった仕組みです。
しかしスポーツドリンクを飲み続けることで糖の摂取が止まらない場合、インスリンの働きが悪くなり、ブトウ糖からエネルギーを得られなくなります。
そうすると、ブドウ糖の代わりに身体に蓄えられていた脂肪がエネルギー源として使われることになり、ケトン体という物質が作られます。酸性の物質であるケトン体が大量に増えることで身体も酸性に傾いていきます。人の身体は酸性が強くなるとうまく機能できなくなってしまうため、これが意識障害を起こす原因となります。
10~30代の男性に多く、糖尿病でなくても発症する
また、これまでの研究によると、ペットボトル症候群は、一般的に10~30代の若い男性が多く、糖尿病などの既往がなくとも発症することが特徴とされています。万一発症してしまった場合、発症の初期にはインスリンの治療が必要となります。改善とともに食事療法のみでコントロールできるようになることが多いですが、一部では内服での治療も必要になることがあります(山守育雄他「インスリン初期分泌の正常化をみた清涼飲料水ケトーシスの1例」「糖尿病」40巻8号)。
運送業や肉体労働者、外出が多い仕事の人は特に注意が必要です。ペットボトル症候群によって倦怠感を抱いているのに、熱中症と勘違いしてさらにスポーツドリンクを飲んで悪化させることもあります。
喉の渇きや倦怠感には脱水症以外にも糖尿病などの病気が潜んでいることもあるので、気になる症状がある場合には受診して検査を受けるようにしてください。