ここ数年、大きな注目を浴びていた男性の育休問題。いち早い法整備を求める声があった一方で、「すでに会社に制度はあるが、利用しにくい」と感じる人も多いと聞きます。男性の育休をめぐる最近の動きや、制度を使うことによって社会がどう変わるのかを、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏が解説します――。
生まれたばかりの息子を愛情たっぷりに抱く父親
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社員の妻の妊娠報告には「育休取得の意向」確認が必要になる

制度があるなら、男性も育休を使ったほうがいい。そう思う読者もきっと多いでしょう。ですが、その裏に男性の育休取得を阻害する動きがあることをご存じでしょうか。厚労省によると、過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性500人のうち、26.2%がハラスメントを受けた経験があると答えたそうです。受けたハラスメントの内容としては、「上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」が53.4%、「同僚による、繰り返しまたは継続的に制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」が33.6%。ハラスメント経験者のうち、半数近くの42.7%が育休の取得を諦めたと回答しています。

また、このようなハラスメントを行う職場の特徴として、「男女問わず育児休業を取得後、復職せず退職する傾向がある」「男性の育児参画に否定的な人が多い」などの声も上がりました(「職場のハラスメントに関する実態調査について」令和2年度報告書より)。

2021年6月3日、私が約4年にわたってロビイングしてきた「出生時育児休業(男性版産休)」が衆議院本会議で可決し、成立しました。これによって、男性も子どもの出生後8週間以内に、育児のため最大4週間の休業を取得することができるようになります。

さらに、法案が成立したことによって企業側に通知義務が発生するようになりました。これは、社員が「妻が妊娠した」と報告したら、企業は男性も育休が取れることを通知し、取得の意向があるかどうかを確認しなければならなくなったということで、歴史的な出来事だと思います。