脳科学を「パパ教育」に活かす
教授たちは現在、これらの研究で集めたデータを基に、消費財メーカーと共同で、親性脳をはぐくむ教育プログラムを開発中だという。
たとえば、スマホアプリで約14項目の質問に答えてもらうと、その人がどのくらい親性脳を持っているかを予測できるようになるという。また、その結果に応じて、それぞれにあった育児教育プログラムを提供することができる。
「子育ては、だれも褒めてくれない。ですから、個別型の教育コンテンツを設定し、目標に到達したら『よくできました』と、可視化してフィードバックする。ドーパミンを高めないと持続できないので、自分の成長を自分で確かめることができるような教育コンテンツを作っています」
議連のメンバーや厚生労働省も、これらの研究結果に注目しているようだ。法律は改正されたが、育休を取りやすくするために企業や自治体をサポートすることが必要だからだ。
「こうした科学的根拠に基づく、親性脳を育成する『パパ学級』のようなプログラムを、負担の少ない形で、自治体や企業などがどうしたら提供できるか。それがこれからの課題です」と松川議員は言う。企業向けには、育休についての個別周知を行うためのマニュアルやフォームを作り、なるべく企業への負担を少なくしながら、多くの人に周知するための仕組みを作っていきたいと話す。
これからが、男性育休普及に向けての本番だ。長い間、子育ては「おんなこどもの話」という文脈で語られてきた。しかし、親としての脳は、育児経験を蓄積することで男女問わず発達することがわかってきた今、男性も育児に積極的に関わってほしいと思う。そして政府や企業には、最近の科学的データも踏まえながら、育休を意味のあるものにするための制度を整えていってほしい。
明和教授は言う。「子育ては、自分の成長の絶好の機会でもある。それを誰もが認識し、男性にも女性にも『堂々と子育てをして成長してください』と言えるような社会にならなければいけないのではないか」