これらの事実からうかがえるのは、日本企業特有の共同体型組織がテレワークによる働き方の効率化、合理化を妨げていることだ。
そもそも共同体の論理とコロナの対策は根本的に相容れない、いわば水と油のようなものだ。なぜなら共同体は人が溶け込むこと、ひっつくことを求めるのに対し、コロナ対策の基本は人を分けること、離すことだからである。
同質性の高い日本型組織は相性が悪い
もう少し具体的にいうと、くり返し述べてきたように日本の組織や集団は「閉鎖的」「同質的」「個人の未分化」という3つの特徴を備えており、それがメンバーへの同調圧力につながっている。ところが情報ネットワークは組織や集団の壁を容易に越え、無際限に広がる。当然、そこには異質な人も参加してくる。
それどころかむしろ異質な知識、技術、立場の人がつながってこそ新しい価値が生まれる。つまりテレワークの時代には、従来の同質性を基本にしたチームから、異質性を基本にしたチームへと切り替えなければならないのだ。
そしてメンバーが物理的に離れたところで働く以上、一人ひとりが仕事を分担しなければ仕事が進まないし、管理もできない。さらに共同体の中に自然とできる序列も無意味になる。ネットの世界ではフラットな関係の中で仕事をするのが基本だからである。
「テレワーク移住」の落とし穴
テレワークの影響は、仕事の領域だけにとどまらない。
テレワークを行っている20~59歳の男女正社員に対して行われた調査によると、4分の1以上の人が「私は、孤立しているように思う」(28.8%)、「私には仲間がいない」(25.4%)と答えている。しかも容易に想像がつくように、テレワークの頻度が高くなるほど孤独感も強くなっている。(注3)
(注3)パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」2020年3月実施
また「コロナうつ」という言葉も生まれるなど、メンタル面に不調をきたす人も増えてきた。(注4)
(注4)国立成育医療研究センターが2020年11月~12月に実施した「コロナ×こどもアンケート」第4回調査によると、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状がみられた。
かつて「会社人間」と揶揄されたように日本人サラリーマンには、地域のコミュニティや趣味の会、ボランティア団体などに所属し、活動している人が少ない。会社という共同体へ一元的に帰属しているため、テレワークで会社との結びつきが弱くなると、孤立しやすいのである。
物理的にはテレワークが普及すると自宅で仕事ができるだけでなく、居住地の制約からも逃れられる。長年続いた東京一極集中、地方から大都市へという人口移動の方向が逆転し、人口の分散化や過疎対策が進むのではないかと期待されている。