米ドルのレートに左右されるコモディティ価格
実は金投資も同じである。
金には、目に見えない「金利」と「保管料」が実際には価格に織り込まれている。つまり、いま読者が金を保有しているとすれば、それが現物であったとしても、先物市場での取引であったとしても、価値が日々劣化している。この点を理解したうえで金をはじめとするコモディティに投資しないと、実際には収益は出ない。
また、為替の問題もある。世界のコモディティ市場は、米ドル建てで取引されている。米ドルが上昇すると、ドル建てのコモディティ価格は下落するのが一般的である。逆に米ドルが下落すると、ドル建てコモディティ価格は上昇する。
それは、ドルが自国通貨でない国がコモディティを輸出する場合を考えれば、容易に理解できるだろう。あるいは、日本の輸出企業の採算に置き換えると分かりやすいかもしれない。円安のときには、ドル建て価格を抑制しないと海外では売れなくなる。それと同じである。
このように、コモディティ価格を形成する背景はかなり複雑で、株式市場の比ではないだろう。だからこそ市場参加者が限られ、「プロの市場」という位置づけになる。
インフレ想定時のポートフォリオの基本
とはいえ、金や銀は、欧米では個人投資家が現物やコインなどを通じて普通に取引している。富裕層で金を保有していない人はほとんどいないだろう。米国では銀も選好されることが多い。
投資家が金や銀に価値を見いだしているのは、コモディティそのものの価値以上に、「通貨の代替」としての機能に対してである。
将来インフレになれば、自身が保有する資産の価値が目減りする。これをもっとも嫌がっているのが富裕層だ。今後インフレを想定しているのであれば、彼らのように金や銀を自身のポートフォリオに入れておくのが基本である。
そして、できるだけ安いときに買うべきである。
そう言うと、「投機筋が下落相場で売ってくるから、押し目買いはダメではないか」という声が聞こえてきそうである。しかし、金や銀は通常のコモディティとは違い、金融商品のような一面もある。
現物でゆっくり買うのであれば、金や銀に限って言えば、押し目買いは有効な投資手法である。これは、持ち運びも簡単で、重量当たりの価値が高いからこそできるのである。
同じ金額の原油や大豆を持ち運ぶことは、現実には不可能であり、かつ保管もできない。まして価値が日々劣化し、現金化もままならない。だからこそ、金や銀が選好されるのである。