最初は王子支店(東京都北区)に配属され、4年目からは大蔵省(現財務省)国際金融局に出向しました。そこでは調査・分析の仕事に携わったのですが、さまざまな業界の現状を徹底的に調べ上げ、今後の見通しについてレポートにまとめるという仕事をやっていました。いかに客観的・多角的な調査をして、誰にでもわかりやすい文章に落とし込むかを、とことん叩き込まれました。バンカーとしてのものの見方の基礎が、あそこで出来上がったと思います。振り返ってみると、私は上司には恵まれてきたと思います。厳しい方が多かったですが、節目節目でいい上司に巡り合い鍛えられました。

銀行に戻ってからは経営企画に長くおりました。私が入行以降、三菱銀行は東京銀行との合併(96年)、日本信託銀行・三菱信託銀行との持株会社設立(2001年)、UFJホールディングスとの合併(05年)など、一貫して経営基盤を強化してきました。私が経営企画に携わってからは、17年に三菱UFJ信託銀行から法人融資業務を三菱東京UFJ銀行(当時)に移すなどしました。いかにグループとしての強みを生かし、より良いサービスを提供していけるかが今後も経営のテーマになっていくと考えます。

金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー

今回の頭取就任に際して私が果たさなければならない責務は、このコロナ禍においてまずは金融の役割をしっかりと遂行することです。現在、最優先で取り組んでいる資金繰り支援を中心とした金融サービスで、社会を継続的に支えていきます。そのうえで、21年4月からMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)で企業変革/成長戦略/構造改革の3つの柱からなる新・中期経営計画(21~23年度)が始まりました。3年後の目指す姿として「金融とデジタルの力で未来を切り拓くNo.1ビジネスパートナー」を掲げ、銀行もこの方向性に沿って3つの重点テーマに取り組んでいきます。

金融とデジタルの力で未来を切り拓く3つの重点テーマ

1つ目は、「国内収益基盤の徹底強化」です。ウェルスマネジメントと法人向けソリューションサービスの充実はさることながら、最も力を入れていきたいのはDX(デジタルトランスフォーメーション)による変革です。この5年間で店舗にご来店されるお客様は半分まで減っている一方で、ネットを通じたサービスのご利用者数は2.5倍に増えており、オンライン業務の拡充は急務です。23年度までには、ほぼすべての金融取引をオンラインでできるようにしたい。同時に、DXは業務フローにおいても推進します。徹底的な効率化で損益分岐点を下げ、強靭な事業基盤を確立します。

2つ目に、「グローバル事業の強靭化」を進めます。前・中期経営計画(18~20年度)では、インドネシアのバンクダナモン連結子会社化など、海外戦略のプラットフォーム構築に目途をつけました。新・中期経営計画での大きな考え方は「量の拡大」から「質の向上」へのシフト。これまで構築してきた海外事業基盤をより強固なものにし着実に利益貢献させていきたい。