感染者数が少ないとはいえ、台湾市民のみならず政府関係者も「水際対策がしっかりしているから、「ウイルスは絶対入ってこない。台湾は大丈夫」と自意識過剰ともいえる空気が漂っていた。この前提が崩壊してしまったいま、感染対策で迷走する日本を横目に「自信の持ちすぎだった」との反省も聞こえてくる。

さらに検査体制が不十分だったという指摘もある。台北在住で観光・運輸政策に関する研究を進めている小井関遼太郎氏によると、台湾では「コロナはもう国内に存在しない」として人々が暮らしてきたため、たとえ発熱しても「コロナが原因ではないだろう」と考える人々もいるなど、PCR検査などを使って陰性か陽性かを調べようとする市民の数は極端に少なかったという。

2018年4月26日の逢甲夜市
写真=iStock.com/FotoGraphik
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もうワクチンに頼るしかない

台湾は徹底したゼロコロナ政策を打ち出してきた。そうしたことから、今回のパイロットを起点とする市中感染拡大についても、「感染は2週間で止める、台湾の奇跡を世界に見せつける」と考える人々も少なくなかった。

「ゼロコロナ」を目指し、かつそれを達成し続けられれば、人々の安心感は大きく高まる。しかし、ひとたび「コロナの鎖国」が崩れてしまったいま、身体が持つ免疫はもとより、精神的な免疫を持たない人々も容赦なく打ちのめした。

そうした市民の不安感を一掃するためには、もはやワクチン接種に頼るしかないところに来ているのではないか。日本からのワクチン到着に感謝の声が沸き起こったのもうなずける。

台湾のワクチン接種率は、人口比で2~3%ほどしかない窮状を呈している。日本が提供したのは英製薬大手アストラゼネカ(AZ)製ワクチン約124万回分だが、この分量はこれまでに台湾で接種された量(約88万回分)を上回る。これに加えて6日には、米国から台湾向けにワクチン75万回分の提供が決定した。

日本ではワクチンの接種予約をめぐり、かなりの混乱を呈している。一方、台湾は「感染抑制の優等生」として世界から称賛されてきた。これまでも成果を上げているITの応用で円滑な接種予約システムを実現し、「優等生」の復権に期待したい。

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