23歳年上の男性と「交際ゼロ日」で結婚

「家族としての情が深まっていくと、セックスみたいな生々しい行為は家の中でしたくなくなるのかもしれませんね」

そう言うのは、ハルカさん(36歳)だ。彼女は4年前、23歳年上の男性と「交際ゼロ日」で結婚した。相手は、仕事以外に趣味をもちたいと通い始めた絵画教室の先生だ。1年ほど通ううちに、ときどきカフェでお茶をするようになった。3度目にカフェに行ったとき、彼からプロポーズされた。

「からかわれているんだと思いました。ただ、彼はバツイチで正真正銘の独身だと言い、『あなたから見たら、ただのおじいさんかもしれないけど』と恥ずかしそうに目を伏せた。もともと先生として敬意はもっていたし、その姿がなんだかかわいくて、最後には『本当に私でいいんですか』と言いました」

ハルカさんは中学生のときに最愛の父を亡くした。その後、母は再婚したが、その男性とはどうしても心を許す関係にはなれなかった。彼もいい人だったのだろう、遠慮ばかりしてハルカさんの心に踏み込んではこなかった。お互いに遠慮し合って、結局、打ち解けることができなかったのだが、その裏には彼女の「実父への強烈な思慕」がある。

だから「絵の先生」に父の面影を探していたのかもしれないと自分で分析する。実際、彼を連れて実家の母に会いに行ったところ、あとで母から「お父さんにどことなく似てるね」と言われたという。

「私はずっと先生って呼んでいるんですが、先生はとにかく穏やかな人。昔は高校の美術教師だったそうです。ひとり息子が10歳のとき奥さんに先立たれて、あとはずっとひとりで子育てをして。息子さんは今、27歳で遠方にいるんですが、一度、会いに来てくれました。親父をよろしくと丁寧に頭を下げられて恐縮したほどです」

手をつないで寝るが、結婚前から一度も性行為はない

結婚は婚姻届を出しただけ。ハルカさんが「先生」の家に越して生活が始まったが、お互いに仕事があるので、顔を合わせるのは朝のひとときと夕食のときくらいだ。

「料理は時間があるほうが作るか、もしくはふたりで作るか。先生は料理がうまいから、率先して作ってくれています」

週末には手をつないで買い物に行ったり映画を見に行ったり。一緒にいるときは常に寄り添っている。シングルベッドをふたつくっつけた寝室では寝るときも手をつないでいるそうだ。だが、結婚前も結婚後も、ふたりの間にセックスの関係はない。