宇宙で中国の存在感が高まっている。2022年には独自の宇宙ステーションを完成させる予定だ。日米欧などの国際宇宙ステーションは老朽化しており、近く宇宙に拠点をもつ国は中国だけとなる恐れもある。ジャーナリストの知野恵子氏は「米ロが40年以上前に実現した古臭い技術でも、中国はこつこつと再現してきた。その継続性が奏功しつつある」と指摘する――。
中国の長征7号
写真=AFP/時事通信フォト
中国の無人補給船「天舟2号」を載せ、打ち上げられる運搬ロケット「長征7号」(中国・海南島の文昌発射場)

「古い」と酷評されたのが20年で一転

宇宙開発分野で中国が存在感を発揮するようになったのは、ここ20年ほどのことだ。2003年10月、ロケットと有人宇宙船「神舟5号」で、人間を宇宙へ送りだすことに成功し、旧ソ連、米国に次ぐ3番目の国となったことがきっかけだ。

1970年4月に初めて人工衛星を打ち上げ、宇宙開発国の仲間入りした中国だが、自国や海外の衛星を盛んに打ち上げていたものの、世界からはあまり注目されなかった。打ち上げ直後にロケットが墜落して死者を出したり、連続して衛星の軌道投入に失敗したりするなど、技術の未熟さが目立ったからだ。

中国が有人宇宙飛行を計画していることは1990年代後半に世界で知られるようになったが、専門家の間では実現性は低いと見られていたのも、このためだ。初の有人宇宙飛行に成功した後ですら、「40年前のロシアの古い技術を使っている」「技術に発展性がない」などと酷評された。

しかし、中国は、そうした声をものともせず、次々とさまざまなプロジェクトに取り組む。中国版GPS「北斗」衛星システムを構築し、世界初の月の裏側への探査機着陸、盗聴不可能とされる量子暗号通信衛星などの最先端技術に挑み、この4月には独自の宇宙ステーション建設に着手し、宇宙飛行士が生活する中核施設「天和」を打ち上げた。その際に使ったロケット「長征5号B」の残骸が5月上旬に地球に落下し、騒ぎを引き起こした。

宇宙の有人拠点はISSと中国製の二つに

今後、日本や米国の宇宙政策に影響を与えるとみられるのは、この中国の宇宙ステーションだ。ロケット残骸落下騒ぎの後も、中国は宇宙ステーション建設を続けており、5月末に宇宙ステーションに燃料や食料を運ぶ無人補給船「天舟2号」を打ち上げ、「天和」とのドッキングにも成功した。今後、実験室などを打ち上げて組み立てていく。6月には、宇宙飛行士3人を打ち上げて3カ月滞在させ、22年までに宇宙ステーションを完成させる予定だ。

現在、日米欧ロなどの15カ国は、国際宇宙ステーション(ISS)を運用している。中国の宇宙ステーションが予定通り22年に完成すれば、宇宙空間には米国が主導するISSと中国宇宙ステーションという、二つの有人拠点ができることになる。

ただISSは24年まで運用することは決まっているものの、25年以降どうするかは定まっていない。欧米は30年ごろまで延長することを検討しているが、ロシアは24年でISSから撤退し独自の宇宙ステーションを建設する方針を打ち出し、米国に揺さぶりをかけている。米国と交渉を続ける一方で、早ければ25年に打ち上げを開始するともしており、宇宙で三つ目の拠点ができる可能性もある。