中国が2016年に公表した宇宙白書では、「宇宙強国の達成」「中国の夢の実現」という方針を示したが、その目標に向けて着々とこなしている。
他国の衛星を危険にさらす懸念も
懸念されるのは中国による宇宙の軍事利用が一層進むことだ。中国は2007年に、運用を終了した自国の気象衛星を地上からミサイルで破壊する衛星破壊実験を行った。その後も、衛星破壊は伴わないミサイル発射実験を繰り返している。衛星から放出した宇宙ゴミに見立てたターゲットを、衛星に搭載したロボットアームで捕獲する実験や、衛星同士を接近させる実験も行っている。
宇宙開発で使われる技術は、軍用、民生用どちらにも使うことができる。衛星を捕獲したり、他の衛星に接近したりする技術は、表向きは、宇宙に漂っているロケットや衛星の破片などの宇宙ゴミを減らすためのものとされているが、使い方によっては、日本など他国の衛星を攻撃し、危険にさらす。
遠い宇宙にある衛星は、縁遠いものと思われがちだが、測位衛星による位置情報、通信衛星を介した通信、気象衛星による観測など、衛星の利用は安全保障や日常生活に深く結びついている。米国は、宇宙ステーションが建設される低軌道に、軍事用の小型衛星を多数打ち上げて、リアルタイムでの偵察、監視、追尾などに使う計画を進めている。新たに加わる宇宙ステーションに、中国がどのような役割を担わせるかが懸念される。
米国は警戒の目を光らせており、宇宙を巡る覇権争いは激化している。中国は偵察衛星などの軍事衛星をここ10年ほどの間に約3倍に増やし、ロシアを追い抜き、米国に迫る。これも米国や日本などの不安を増幅している。
“米国一強”から新たな局面に入った
宇宙開発は政治や国際情勢に大きく左右されてきた。ISSにしても、当初はロシアの参加は予定されていなかった。ソ連崩壊によって宇宙技術が流出することを恐れた米国が、突然ロシアを加えると表明し、日本など参加国を驚かせた。ISSに参加する欧州はこれまで中国とさまざまなプロジェクトで協力をしてきた実績があり、今後の動向が気にかかる。
一方、破竹の勢いで成長を続けてきた中国だが、急速に少子高齢化が進み、これまでのように宇宙開発の勢いを保てるかどうかは不透明な状況になっている。
宇宙を舞台に大国間の思惑と駆け引きが今後、加速されることは避けられない。世界の宇宙開発はこれまで体験したことがない新たな局面を迎えている。そうした中で、日本もISSなどの宇宙政策をどう進めていくかが問われることになろう。