難攻不落といわれたB社に営業できたのは、A先輩ががむしゃらにやったという気合や精神論の問題ではなく、続ける仕組み化がしっかりなされた結果の成功でした。
ここが「いいしつこさ」のキモです。
「いいしつこさ」には、気合や根性は必要ありません。ある意味クールに、どうやったら続けられるか考え、仕組み化・習慣化する姿勢が大切なのです。
もう少し補足しておきましょう。
A先輩は、どちらかといえば人見知りで内向的なタイプでしたが、一日70件の営業をやり続けることのできるすごい方でした。「あいつは器用ではないが、信用できる」との評価を得ており、やり続ける力のカタマリのような先輩でした。
しつこく続けていたその時間もB社の社長さんはちゃんと見ていて、評価してくださったのでしょう。A先輩は「やり続ける」ことで営業を成功させたのです。
信頼貯金もしつこさから生まれる
「いいしつこさ」でうまくいった話をもう一つ紹介します。自分の体験談です。リクルートで求人広告の営業をしていたときの話です。
あるうどん屋さんへ飛び込み営業しました。
一回目、店に入ったら無視されました。
二回目も、完全に無視。
三回目はなんと、私がいないかのように店の主人Cさんがふるまいました。
存在すらないことにされるとは……。いまでこそ笑えますが、当時は相当落ち込みました。「なぜだ?」と。
でも「なぜ?」と考え始めると、明快な答えに出会えないんですよね。そんなとき、私はいつも、「どうすれば?」と、自分に問いかけます。
うどん屋さんに営業し、求人広告を受注したいというのが目的。主人のCさんはけんもほろろ、私など全く眼中にないというのが実情。
うまくいくか、いかないかわからない状況でしたが、「完全に無理」という言葉は、私の辞書にはありません。「(どっちに転がるか)半々やな」と思いました。
目的がかないそうにないから、ダメだからと撤退するのではなく、八方塞がりな状態を「どうすれば」変えられるかと考え抜いて出した答えは、「とりあえず、お客さんになってうどん食べよう」でした。
うどんを食べた先に広がった未来
何度無視してもやって来る面倒くさい営業ではなく、純粋に一人の客としてうかがったので、Cさんには何のリスクもありません。Cさんは私を普通に迎えてくれました。
完全無視されていたはずの私の話相手に、ほんの少しだけなってくれました。そしてその後も、あきらめずに営業は続けました。
しばらく経ったある日、店に入った私の顔を見るなり、「伊庭さんには負けたわ」と、Cさんは苦笑いしながら話しかけてきたのです。