米中にも相当な被害が及ぶと思われる。米中は政治的には対立しているが、経済的には現在供給不足が深刻な半導体や先述のアップル製品が代表されるように、サプライチェーンがガッチリ構築されて結びついている。従って、台湾有事となれば、経済活動が世界規模で停滞するだろう。

台湾自体は物理的に破壊される可能性大。軍事大国化した中国相手では、いざ事が起これば、カナダやオーストラリアあたりに逃げ出す台湾人は続出するだろう。つまり、台湾有事は誰にとってもいいことはひとつもないのだ。

英連邦のような緩やかな連合体の「中華連邦」をつくるしかない

中国と台湾に関しての私の持論は、ニクソン・キッシンジャー以前に戻り、英連邦のような緩やかな連合体の「中華連邦(コモンウェルス・オブ・チャイナ)」をつくるしかないということだ。実際、私が台湾の経済顧問を務めていたときに、当時の李登輝総統にこれを提案したことがある。彼はたいへん乗り気だったが、北京側が連邦制を認めたがらなかったため残念ながらそのときは実現しなかった。だが、香港や新疆ウイグル自治区の統治で世界中から非難を受けている今なら、台湾を無傷で統治できるようになる連邦制を中国が受け入れる可能性はゼロではないだろう。

ただ、キッシンジャーを超えるような外交力はバイデン政権にはないだろう。日本がアメリカに「中華連邦」のような構想を提言する手もあるが、「ジョー」「ヨシ」と呼び合って首脳同士の親密さをアピールする程度の外交力では期待するだけ無駄であろう。

本稿で述べたとおり、中東だけでなくまさに中国に対しても態度を急変させてきたアメリカに従属して、今(日本にとっては2000年も付き合いがある)中国と敵対することは絶対にしてはならない。中国とは経済的結びつきを強化して、日本は衰退からの脱却を図る。米中のはざまに置かれた日本外交は、このことを確実に肝に銘じるべきである。

(構成=山口雅之 写真=時事通信フォト)
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