ホームベーカリーが好調な売れ行きを見せている。日本電機工業会が集計した国内出荷推移によると、2003年度から毎年2ケタ成長を続けており、09年度は前年比128.9%の45万4000台となった。この調理家電は、1980年代末のバブル絶頂期と米不足で小麦粉が注目された94年に大ヒットしている。つまり、今回は第3次ブームに当たる。
女性情報誌「Mart」の大給近憲編集長は「当誌も08年から、関連ムック3冊を発売。合計で33万部に達した。最近の市場を牽引しているユーザーは、食パンを焼くだけでは満足しない女性たち。米粉が使え、麺やパスタの生地が作れるなど機能を生かし、有名店の味を家庭で再現したいというニーズを持っている」と話す。
彼女たちは、おおむね30代半ばの専業主婦で、製菓・製パン材料専門店での買い出しから、焼き上げ、食卓で家族や友人と楽しむことをイベント化しているという。そして、同様の趣味を持った仲間同士のコミュニティも生まれる。ホームベーカリーは、そのためのツールとしての役割を担ってきたといっていい。
今後、このマーケットはどう動くのか。「パナソニックなどのメーカーが、流行に応じて変わる主婦たちのニーズに合致した機能を提供できるかどうか。それを見誤ると簡単に浮気されてしまう」と大給氏は語る。彼女たちはパン作りを極めるというより、外のおしゃれなものを真似て人に見せたいという志向が強い。そこに改良・開発の視点を定められればブームも続きそうだ。
(ライヴ・アート=図版作成)