成功者はプライベートの時間も仕事に熱中しているもの
方程式の3つの構成要素の中で、僕は特に「熱意」に注目したい。
「成功させようとする意志や熱意、そして情熱が強ければ強いほど、成功への確率は高いのです。強い思い、情熱とは、寝ても覚めても、二十四時間、そのことを考えている状態です」
稲盛さんは著書『成功への情熱』の中で、こう述べられている。
“寝ても覚めても”などと言うと、いまではパワハラになってしまうので、慎重に解釈してほしい。成功している人というのは、プライベートの時間であっても仕事に熱中しているものだから、あなたも結果を出したいのなら、自分の仕事に没頭しきって真剣に取り組まなければいけない――。そんな成功者の激励の言葉と取るべきだろう。
「狂気を感じるほどの没頭」を手に入れろ
僕の知人にも、没頭力の高い人はたくさんいる。ここでは、ニュージーランドのワイナリー「KUSUDA WINES」のオーナー・楠田浩之さんを紹介したい。
楠田さんは、ニュージーランドのマーティンボロに2001年から移住。ブドウづくりからワインの醸造までを、ほぼ家族経営で手掛けている。小規模なビジネスだが、彼のワインは、いまや世界的に知られる高級ブランドに成長しているのだ。
楠田さんは、かつて富士通や在シドニー日本国総領事館で働いていた。ワイン好きが高じて醸造家を目指し、退職。
32歳でドイツのガイゼンハイム大学ブドウ栽培・ワイン醸造学部に入学した。このとき出会った先輩から、挑戦する場所にニュージーランドを薦められ、マーティンボロを拠点にすることを決めたという。
彼のワインづくりのこだわりは、本当にすごい。ブドウのひと粒ひと粒を選定するために、気の遠くなるような手間を掛けている。現地では畏敬の念を込めて「ボンサイ・ピッキング」と評されているそうだ。
栽培から醸造の全行程を、ほとんど楠田さんひとりで手掛けているため、年間で製造できるワインの数はボトルで1万本に満たない。ワイナリー経営では最低でも4万本は製造しないと採算が取れないと言われるなかで、異例の生産体制だ。それでも楠田さんのワインを求める消費者は世界中にいて、しっかり黒字を出しているという。
楠田さんはワイナリー経営を拡大する予定はないらしい。スケールの拡大より、クレイジーな自分のスタイルを守っていくやり方を選んだ。
好きなものに没頭して、海外進出をやりきって、自分のブランドも確立した。楠田さんは類い稀な没頭力で夢を叶えた、成功者のひとりに違いない。