どう走れば速くなれるのか、どんな戦術なら勝てるのか。学校の体育や部活に、PCやタブレットなどデジタル端末を導入し、児童・生徒自身が考えて取り組む動きが盛んだ。独自のソフトやノウハウを提供している「STEAM Sports Laboratory」社長の山羽教文さんは「端末を使いながらスポーツをすることで課題解決などのスキルを学び、困難にも立ち向かえる力を身に付けていくことができる」という――。
STEAM Sports Laboratory社長の山羽教文さん
写真提供=STEAM Sports Laboratory
STEAM Sports Laboratory社長の山羽教文さん

京大を蹴って早大ラグビー部主将→物産マンとなった男が仕掛けた

今、新しい教育ビジネスが注目されている。仕掛けているのは、「STEAM Sports Laboratory」(以下STEAM Sports、東京都港区)の山羽教文(49歳)社長だ。

近年、ビジネスシーンでもその重要性が指摘されているSTEAM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Arts:芸術、Mathematics:数学)の視点をスポーツ教育にも加え、新たな“学びの場”を作り出そうという試みだ。

子供たちが体育や部活の時間などにPCやタブレット、スマホといったデジタル端末を使いながら「課題解決」「対人関係」のスキルを学び、困難にも立ち向かえるライフスキル(自分らしく生き抜く力)を身に付けていくことが狙いだ。

立ち上げ2期目の売り上げはコロナ禍で、100%以上アップ

同社は、主に自治体や小中高の学校に働きかけ、ノウハウや端末などを提供している。立ち上げてからまだ3期目だが、2期目の売り上げ(2020年9月)はコロナ禍にありながら、1期目と比べ実に100%以上アップした。今年も業績は好調だという。

気になるのは後述する業務内容だが、山羽氏のユニークな学歴・経歴にも関心が向けられている。

出身は兵庫県だが、野球部に入りたくて神奈川県の桐蔭学園高校に入学したものの、当時は推薦入学者しか野球部に入れず、やむをえずラグビー部へ。全国大会「花園」には出られなかった。結局、地元に帰るつもりで京都大学農学部を一浪の末に合格する。

ところが、早稲田大でラグビーを極めたくなり、併願していた早大に進学することを選択する。それもラグビーの練習に支障が少ないという理由で、理工学部ではなく教育学部を選んだ。

一浪したこともあり、ラグビー部に入った当初は“下から2番目”の8軍だったが、そこから這い上がり、4年時にはキャプテンに就任し、レギュラー選手として大活躍した。『Number』1020号では、山羽氏を<フロンティア精神に溢れたリーダー。主将就任後に元日本代表監督のOB、宿澤広朗氏を再三訪問して監督就任を実現させた>と評している。

早大を卒業すると、三井物産に入社。6年のサラリーマン生活の後、アメリカに留学しスポーツマネジメントを専攻した。通ったオハイオ大学はその道の草分け。2年後に帰国、STEAM Sportsの前身となる教育事業を行う会社を起業した。