スティーム教育で算数と体育を同時に学ぶという独創的発想
その結果、多くの教育的な効果が表れているという。
タグラグビーは好きだけど算数が嫌いという子が、どのような角度で走れば守備選手の脇を抜きされるか“数学的”に考えるようになった。逆に、運動が苦手だけど、プログラミングに興味があって参加した生徒は端末で戦略を考えているうちに、おのずとルールも分かり、プレーも楽しめるようになった。
タグラグビーはすでに数年前から小学校の体育の学習指導要領に掲載され、ボールゲームの選択科目に入っているが、他にも広がりを見せている。
例えば、全国大会の常連でラグビー強豪校・大分舞鶴高校もSTEAM Sportsの働きかけで一般の生徒の授業でタグラグビーを取り入れた。
大分県は、2020年度に2つの中学校と16の高校で体育の時間にタグラグビーを導入。県ぐるみでスティーム教育に力を入れている。同県の高校では2021年からバスケット部と野球部の部活の際にPCやタブレット端末が使われることになった。
バスケットはシュート、リバウンドなどのデータを洗い出して課題を見つけて戦略を考える。野球は、端末に入れてある「打順シミュレーションソフト」で効率的な攻撃を目指す。感覚だけに頼らず数字を交えることで新たな課題解決能力を身に付けることが目的だ。
山羽氏の片腕的存在の役員・原口富明さん(49歳)は桐蔭学園ラグビー部の同期。学習院大でもラグビーを続けて卒業後は銀行に就職し、3年前に転職してきた。
「各地の小学校には冬の体育の授業に『タグラグビーを』とお薦めしています。実際、(東京)港区の5つの小学校で冬の12月からタグラグビーを始めてくれました。港区の場合、小学校は1クラス約25人なので6人編成で4つチームを作ります。ゲームに参加していない子はタブレットで動画を録ったり、ボードを使って相手守備陣の抜け穴のここ狙えばいい、といった分析をしたりします」(原口さん)
港区の小学校では生徒全員にタブレットが貸与されている。それだけにデジタル端末の扱いにも慣れている。同区では将来的に予算がつけば5校だけでなく全小学校の18校でやりたいという話も出ているという。
事業例③ 高校野球
野球のスティーム教育は、メジャーリーグや日本のプロ球団でも使用されているデータ計測器「ラプソード」を使う。山羽氏の会社は昨年夏、山形東高校に貸しだした。
バッティングの動画を撮ると、打球の初速、角度などを把握できる。また、ダウンスイングなのか、レベル(水平)スイングなのかもわかり、それぞれにどのような動きをすればさらに遠くに飛ぶのか。各部員が体だけではなく、頭を使って野球をするようになるのだ。