「新陳代謝でいいと思っている」

えりなさんは、高校中退後、18歳から22歳まで、最低限の緩いルールしかない地場系キャバクラ店で働いてきた。勤務経験はキャバクラしかないえりなさんが、急に昼の仕事に移るのは非常に困難だ。

それにもかかわらず、時給の高いコールセンターを選んだことで、慣れないマニュアルと電話対応に疲弊し、適応障害となってしまった。

こうした事例はさやさんやえりなさんだけなのだろうか。キャバクラ経営者にも聞いてみた。

1店舗目の経営者は「戻りたいって言ってくる子はいるよ。でも、あまり出勤させられないって正直に伝えると迷ってしまうみたい。しかも、時給カットが続いている状態だから、現状で戻っても、前みたいな感覚とは違うんだよね。それに混乱してしまうかもしれないから、こっちも少し、対応を変えていかないといけないかも。女の子が働きやすいようにしないといけない」とキャストを気遣っていた。

正確な店舗数は把握できないが、コロナ禍で潰れたり、買収されたりしたキャバクラ店は増えているという。

もう一つは、老舗の部類に入る実績あるキャバクラだ。

「うちはある意味、新陳代謝でいいと思っている。女の子も新しくしないとお客さんが飽きてしまうからね。コロナ禍の経済的ダメージはかなり大きいよ。女の子にもすごく負担をかけている。でも、これを乗り越えないとどうにもならない」。キャストの女性にとってはつらい現実だが、経営者は淡々と話す。

「うちの女の子は掛け持ちも多いし、学生もいるから昼間の仕事を探しても困らない。問題は、夜一本でやっている女の子への対応をどうするかだよね。これは考えさせられている」

県独自の対応が必要だ

さやさん、えりなさん、そして経営陣の話をまとめると、「夜職から昼の仕事への移行」の難しさが浮かび上がってくる。コロナ禍が長引けば長引くほど、夜の繁華街で働く人材は不景気のあおりを食らい、流動的になる。加えて、本土よりも客によるボディータッチやセクハラに甘い沖縄の店舗では、精神的なダメージを受ける女性キャストも少なくはない。

問題のある若い女性のシルエット
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キャバクラや風俗店の仕事を失い困窮する女性たちに対し、行政や支援団体が手を差し伸べるべきだという指摘もある。だがさやさんのように、家族にすら鬱病を打ち明けられない人が公的機関に相談するハードルは高い。「何をしたらいいのか分からない」「自信がない」にも関わらず、無理やり行政や支援団体が介入したら精神疾患が悪化する可能性もある。