客を呼べと言われても来るわけがない
「上の人に呼び出されて、客を呼ぶように言われたんですけど、緊急事態宣言を繰り返している現状で呼べるわけがないじゃないですか。ナイチャー(県外)のお客さんも減ってるし、新規のお客さんに10分しかつけないんですよ? どうやって呼べば? と思いましたね」
その後、さやさんは、精神的に追い詰められ鬱病が悪化してしまった。昼間の仕事をしようにもやりたいことがないし、そもそも自分に何ができるのか分からない。簡単にできそうな仕事は、すでに人材がオーバーしている状態だ。
途方に暮れたさやさんは、出勤が少しずつ減ってしまい、現在では週末しか出勤していない。10万円程度の収入で貯金も少なくなっている。困窮する前に実家に戻る手もあるが、その場合は鬱病を患ったことを家族にカミングアウトしないといけない。
果たして鬱病を親が理解してくれるのか、また家族関係が良好になるのかも分からない。さやさんは不安に頭を抱え、眠れない日々を送っている。
困窮して昼間のアルバイトを始めたが…
別の日、筆者の元同僚であるえりなさん(22歳、仮名)から連絡があった。決して売れっ子とは呼べないえりなさんはコロナ禍で出勤を削られ、金銭的に窮地に立たされた結果、昼間のアルバイトとしてコールセンターに務めるようになった。
沖縄県の最低賃金は時給792円だが、コールセンターは時給1000円以上が多く、非常に魅力的な職業だ。とはいえ、勤務時間中はずっと誰かの話を聞いたり、対応を覚えたりしなければならず、実際は非常にハードな仕事である。自由におしゃべりができるキャバクラと比べて「こうしてはいけない」ずくめの仕事に、えりなさんは困惑していた。
「最近、バイトに行くのがしんどくて心療内科に行ってみたんですよ。そしたら、適応障害って言われてしまって……。やっぱり、昼間の仕事はできないんでしょうか」と、不安げに話す。
沖縄の地場系キャバクラ店は、覚えることが非常に少なく、個人の資質と裁量で何とかなってしまう。本土系列のように欠勤、遅刻などによる罰金制度などもない。だからこそ、制度化された一般の職場に移ると、ギャップに戸惑うことになる。