両者はシーソーのようにバランスをとっており、基本的には、朝、目が覚めるころから徐々に交感神経が優位になり、夕方になると副交感神経が優位になっていきます。
本来、夜、寝ている間は副交感神経が優位になり、側頭筋の緊張が緩んでこりや疲れが解消されるはずなのですが、過度の疲れやストレスなどにより、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかないと、心身の緊張状態が続き、側頭筋のこりや疲れも解消されません。
側頭筋が硬くこったままでいるのは、サイズの小さい帽子を無理矢理かぶり続けているようなものです。これは、寝てもなかなかとれない疲れの原因となり、ときには頭痛をもたらすこともあります。
頭の筋肉は、首や肩の筋肉につながっているため、側頭筋が疲れ、こると、首や肩のこりもひどくなります。
しかも、脳には体の状態をコントロールする働きがありますが、放置されたこりが頭の血管や神経などを圧迫すると、体の情報をキャッチしたり、体に指令を出したりすることが、スムーズにできなくなります。
こうして、側頭筋をはじめとする頭の筋肉の疲れやこりが、さまざまな心身のトラブルを招き、それが新たな疲れやストレスの原因になるという悪循環が発生してしまうのです。
コロナ禍で増えている「マスク頭痛」
ちなみに、拙著『寝てもとれない疲れをとる神マッサージ』の監修をしてくださった脳神経内科医の内野勝行先生によると、最近、頭痛を訴える患者さんが増えているそうです。
その大きな原因は「マスクの着用」です。
2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で猛威をふるい、人々は外出する際に、マスクの着用を余儀なくされるようになりました。感染拡大を防ぐためには仕方がないこととはいえ、この、たった数グラムしかないマスクが、頭の疲れや頭痛を引き起こしているケースが少なくないのです。
頭蓋骨は、さまざまな衝撃から脳を守るため、柔軟に動くようにできており、他の部位と比べて、ズレやゆがみが起こりやすいという特徴があります。
マスクを着用する(マスクのゴムによって耳が引っ張られる)時間が長くなると、頭蓋骨にズレやゆがみが生じ、頭の筋肉に過剰な負荷がかかったり、筋肉を覆っている筋膜が萎縮・癒着を起こしたりします。
その結果、筋肉や筋膜が硬くなってこりが生じ、頭をしめつけるような状態になり、疲れがたまったり、頭痛が起こったりしてしまうわけです。
さらに、マスクをしていると、自分が吐いた二酸化炭素をすぐに吸うことになるため、血液中の炭酸ガスの濃度が高くなり、脳内の酸素量が減って疲れやすくなります。