「日給10万円」実はそんなにおいしくないウラ事情

【コロナワクチン接種の流れ】

現在の高齢者向け接種は以下のような手順で行われている。医師の主な仕事は(4)問診と(7)急変対応だ。接種そのものは、看護師が務めることが多い。

(1)事前の接種予約(オンライン/電話/自治体窓口)
(2)当日の書類チェック(接種券/問診票/身分証明書/予約確認など)担当:一般事務職
(3)業務効率化のために看護師による予備問診、検温、お薬手帳チェック
(4)本問診:医師

「血液をサラサラにする薬を飲んでいる」「過去に予防接種でアレルギー」など、「要注意」な接種希望者は、医師がさらに詳細な問診を行い、そうでない人にも簡単な問診を行い、予防接種の可否を判断する。

(5)接種 担当:看護師など(薬液充填は薬剤師などが担当)

予防接種は看護師が担当することが多い。現在、歯科医師による筋肉注射も検討中。

(6)経過観察15分 担当:看護師など
(7)急変対応 担当:医師
(8)何もなければ帰宅

接種の現場で「適切な説明を」言うは易し、行うは難し

厚生労働省発行の「医療機関向け手引き」には、コロナワクチン接種に関してこう記載されている。

「予防接種の有効性・安全性、予防接種後の通常起こりえる副反応やまれに生じる重い副反応、予防接種健康被害救済制度について、新型コロナワクチンの接種対象者又はその保護者がその内容を理解しうるよう適切な説明を行う」

適切な説明を、とサラリと書いてあるが、これが大きなネックなのだ。

なぜなら、簡単な問診でも2~3分はかかり、少し念入りに説明すれば1人30分必要となることもある。「難聴」「認知症」などがあればさらに時間が必要だ。また、昨年、「マスク着用を拒否して途中降機」した航空機の乗客のように、半ば確信犯的に医療従事者を困惑させる人も、少数ではあるが確実に存在する。

ワイドショーや週刊誌では「ワクチン接種後に26歳が急死」といったドキッとするような記事が出ることもある(※)。また、ネットを検索すれば「コロナのワクチンにはマイクロチップが入っていて、5G電波で操られる」のような根拠不明な情報も散見する。

※編集部註:2021年2月17日から4月27日までにコロナワクチン接種後の死亡として報告された事例は19 件。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会などが4月30日に発表した資料では、この19件すべてが現状、専門家は「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」としている。

こういう不安や陰謀論にナーバスになってしまった人に対する「適切な説明」には何時間必要になるか見通すことができない。

並べられた1万円札
写真=iStock.com/GA161076
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筆者の見立ては、現在のシステムでは「問診2分+書類1分」ペースで順調にこなしても、「10時間ノンストップで1日200人」が限界であると思われる。仮に、途中で「テレビで○○と言っていた、大丈夫ですか? 何かあったら責任取ってくれるんですか!」などと詰問されたら、時間のみならず精神的にもかなり消耗するのは確実だ。

逆に問診の結果、「接種は不適当」と判断した場合にも、「納得できない」「差別された」「コロナになったら責任とってくれ」などと食い下がられる可能性がある。作業はそこで完全にストップする。