顧客に叱られながら、営業活動に励む日々
グローバルな企業で働きたいと考えていた藤森さんは、外資のEMCでチャレンジしてみようと決意。アソシエイトSEとして入社し、Presales Account SEチームに所属する。プリセールスとは、インフラシステムのソリューションやサービスをクライアントに提案、販売する際に、営業担当と一緒に、SEとして技術的な観点でのサポートをする仕事。大学を卒業してからの3年間は、ソフトウエア開発の企業でプログラマーとして働いていた藤森さんにとって、営業活動はまさに未知の世界だった。
「最初の数年はもうがむしゃらにやっていた感じです。技術的なこともあまりわかっていなかったので、お客さまに厳しい言葉をかけられることもありましたし、営業先で、他のハードウエアのベンダーさんが20人くらいいる中で、うちの説明をしなければいけないこともあって、試練続きの日々でした。大変だった分、度胸はつきましたね」
ただ、経験を重ねるほどに技術的なことは身についていったが、そもそも「ビジネスとは何か」を、自分は理解できていないと痛感する場面が何度かあった。そこで入社7年目にチャレンジしたのが、MBA(経営学修士)の取得だ。
学生時代にアメリカ留学も経験している藤森さんは、海外のビジネススクールで学ぶことを選んだ。一年間休職すると、オーストラリアへ留学し、猛勉強の末にMBAを取得。マネジメントへの興味も湧いて、「マネジャー」になりたいと思うようになった。
年上男性からの冷ややかな目線
復職後の2008年にリーダー職となり、2011年にはマネジャーへの昇進がかなう。SE職は女性が少なく、部署内では初の女性管理職に。自分が思い描くマネジャー像を目指そうとしていた。
「すべてのことに明確な答えを持ち合わせ、的確に指示ができるだけでなく、論理的な説明で他部署との調整もスムーズにこなしていく。そんなふうに、何事にも強い姿勢で臨むマネジャーであらねばと思っていたのです」
だが、チームは年上の男性ばかりで、メンバーとの関わりは難しかった。新任の女性マネジャーに何ができるのかと冷ややかな目線を感じ、自分の指示にも反応は希薄だった。数カ月経つと、同期で親しいメンバーも「会社を辞める」と言い始め、大きなショックを受けた。