とても気持ちの優しいセールスマンのようである。押しが弱く、嫌われたくない気持ちになるのは、なぜか。
「店長に『お客様のことについてあまり興味を持っていない』といわれることがあります。私が担当して、車を購入していただいたお客様のことは、すごくよくわかっていて、いろいろ話もできるのですが、それほど付き合いのないお客様とは、どこかぎこちない。商談にまで持ち込みにくいんです。そのお客様の情報をしっかり把握していないからだと思います」(塚田氏)
付き合いの密度の濃い顧客とは、なんでも話せるが、そうでない顧客とは弾む会話ができない。週末、電話によるアポや顔写真付きのチラシを手に塚田氏指名で来店しても、彼自身は一度も会ったことがない顧客だったりするケースもある。これでは会話は盛り上がらないし、さらに販売台数を伸ばすことは難しい。
「平日は会う機会が少ないので、来店していただいたときに、いろいろな話をしてお客様の情報を収集し、『塚田』を覚えていただける接客をするよう心がけています」(塚田氏)
平日は留守宅が多いといっても、例えば、家そのものからも顧客情報を探すことはできる。丹念に情報を集め、顧客と接する時間を増やす。「嫌われたくない」セールスからの脱却は、それしかない。塚田氏はそう考えている。
(的野弘路=撮影)