ところが、こうした厳しい対応について、台湾の人々は「いたって当然」と捉えている。これは、政府がこの1年あまり行ってきた感染拡大防止対策が功を奏していると、国民が信頼しているからだ。さらには、そのための情報発信や説明責任を政府が着々と果たしてきたことも大きい。
成功のカギは、技術や利便性ではない
日本でマイナンバー制度の推進にあたって「国家に個人情報を把握されるのが怖い」などという人がいるが、それは政府と国民の信頼関係の問題だ。個人情報を把握されるというのなら、政府よりもアマゾンのほうが、よほど人々の嗜好や生活習慣をよく知っているだろう。
日本では、マイナンバー制度の前段階ともいえる住民基本台帳ネットワークシステムの頃から、メディアや反対論者が政府による国民の管理ばかりを強調し、不信感が醸成されてきた部分もあるといえる。
しかし、結局はそうした不信感を払拭する努力を怠り、情報発信や説明責任を十分に果たしてこなかったのは、やはり政府の責任なのだ。政府と国民とのあいだに十分な信頼関係が構築され、さらにマイナンバー制度の運営がメリットになることを国民がきちんと理解しなければ、本当に役に立つ制度は確立できない。
政府はデジタル革命の核として、マイナンバー制度を掲げている。その成功のカギは、実は技術や利便性ではなく、国民からいかにして信頼を得るかにかかっているのである。