共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が強調された

これまで沙鴎一歩は、中国・習近平(シー・チンピン)政権の国際秩序を乱す覇権主義的行動を批判してきた。

防空識別圏(ADIZ)への侵入の繰り返しなど台湾への軍事的威嚇は続いている。今回、日米首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が強調されたことで威嚇行動はさらにエスカレートする可能性がある。

新疆ウイグル自治区では少数民族に対するジェノサイド(集団殺害)が行われているとのアメリカの指摘に、中国は「今世紀最大のアメリカのウソだ」と認めようとはしない。国家安全維持法を制定するなど香港の民主派の弾圧についても「あくまでも中国の内政問題で、外国に干渉する権利はない」と主張している。

2017年10月10日、オアシス・チャルチャンの町の近くで綿の収穫をするウイグルの労働者
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沖縄県の尖閣諸島周辺の日本の領海では、中国海警船が不法な侵入を繰り返し、操業中の日本漁船を追い回して威嚇している。尖閣は日本の固有の領土だ。それにも関わらず中国は、一方的に領有権を主張する。中国は尖閣を“防波堤”にして地理上の軍事的優位性を確保しておきたいのだ。

なぜ、中国は過激な行動と発言を繰り返すのか。中国は今年7月に「中国共産創設100年」を迎える。100年の重みとともにアメリカに屈しない姿を巨大経済圏「一帯一路」に関係する国々にアピールしているのだ。

韓国内には「日本に先を越された」と批判する声も

中国以外の国はどんな反応を示したのか。

たとえばアメリカと中国の板挟み状態になっている韓国。日本とアメリカが中国を強く牽制したことで、5月に予定されている米韓首脳会談で「韓国も中国を批判することを求められる。しかし、韓中関係への悪影響は最小限に抑えたい」と文在寅(ムン・ジェイン)政権は難色を示している。

文在寅大統領は、経済的なつながりの深い中国との関係を重視している。このため、中国を念頭に置いた日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」への参加にも消極的だ。ただ、バイデン政権が対北朝鮮政策を見直す作業を進めるなかで、早く米韓首脳会談を実現して南北融和を掲げる文大統領自身の考えを反映させたいとの思惑もある。

文大統領はバイデン氏が迎え入れる、菅首相に次ぐ2番目の外国首脳になる可能性が強いが、韓国内には「日本に先を越された」と批判する声もある。