中国が「債権の罠」に陥る可能性

東京大学の西沢利郎教授はこの「債権の罠」という概念を使用し、中国によるラオスの鉄道事業開発支援の現状を解説された。この考えは、モンテネグロのケースに当てはめても十分に説明力を持っている。モンテネグロ向け債権は中国にとって小さな規模に過ぎないが、今後こうしたケースが世界的に多発すれば、中国はこの罠に陥ることになる。

中国はスリランカのハンバントタ港の開発を支援したが、スリランカ政府の資金難に伴い、2017年から99年間の港湾運営権を中国の政府系企業に貸し出す契約が結ばれた。このケースがセンセーショナルであったがゆえに、中国による借金漬け外交で破綻する途上国が連鎖するという「十把一絡げ」な印象が一気に広がった経緯がある。

しかしながら、政治色が先行する中国の「一帯一路」戦略で支援された事業の多くが、モンテネグロのケースのように不採算である可能性は極めて高く、将来的に中国に多額の経済的な負担を強いることになりかねない。人口62万の小国で生じた今回のイベントは、EUと中国の双方にとって重たい意味を持っているといえよう。

西バルカンを中心とする中東欧諸国は近年、EUと中国双方の思惑が外れる形で二分化している。EUも中国も、中東欧を思うように抱え込めていないわけだ。それでも中国は援助を出す用意があるため、いくつかの中東欧諸国にとってはまだまだ魅力的だ。それに抗うにはEUもまた援助を出す必要があるはずだが、EUは二の足を踏み続ける。

なお「債務の罠」に直面しそうな国に対して日本ができる協力は、事実上、ソフト面でのサポートに限られている。収益改善のためのノウハウを提供するなどして、不採算事業の改善に資することができれば、それは「債務の罠」に陥った途上国を救うのみならず、間接的に中国に対して一定の影響力を行使することにつながる。

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