「運動したらタンパク質」は致命的な間違い

私たち医師が学生時代に必ず習う科目に「生化学」があります。化学式をいじくり回す退屈な内容であるため、多くの医学生から嫌われています。

ところが、私は生化学が大好き。今も『リッピンコットシリーズ イラストレイテッド生化学』などの専門書を愛読しています。

それら生化学の教科書に書かれていることを読めば、不自然なタンパク質を摂ることでどういうリスクが生じるか明確にわかります。ちょっと専門的になりますが、とても大事なことなので説明しましょう。

肉や魚や豆腐など(もちろん人工的なプロテインもですが)を口から入れれば、消化していく過程で、タンパク質はすべて「アミノ酸」という物質に変わります。このアミノ酸は、私たちの体にあるタンパク質の材料となります。私たちの体のタンパク質は、絶えずつくりかえられており、その材料となるわけです。

一方で、運動をしようがしまいが関係なく、筋肉も含め体のタンパク質は絶えずつくりかえられています。だから、「運動をしたらタンパク質の補給が必要」という考えは間違っています。運動の有無は関係ないのです。

では、どのくらいつくりかえられているのでしょうか。1日にだいたい400グラムのタンパク質が壊され、400グラムが新しくつくられています。前述したように、その材料はタンパク質が分解されたアミノ酸です。

「アミノ酸プール」で体内に大量にストックされるアミノ酸

さて、ここで、あなたは思うはずです。

「だったら、やはりたくさんタンパク質を補充しなければ、つくりかえるためのアミノ酸が足りなくなってしまうじゃないか」

ところが、そうではないのです。もし、補充しないとタンパク質が足りなくなってしまうのなら、山で道に迷ったり、災害に遭遇そうぐうして数日ろくな食べ物を得られなくなったりした人は、すぐに命を落としてしまうでしょう。そんなことにならないように、私たちの体はパーフェクトにできているのです。

私たちの体には、「アミノ酸プール」というシステムが備わっています。名前の通り、アミノ酸を大量にプール(ストック)しておくシステムです。

具体的には、体の細胞の中、血液の中、細胞の外の細胞外液などに、約100グラムのアミノ酸がいつでも貯蔵されています。