多くの資産が売り上げに結び付かない「不稼働資産」に
西武HDは21年1~3月期にも追加で約180億円の減損損失が発生するとして、業績予想を下方修正した。政府の観光支援策「Go Toトラベル」キャンペーンが停止され、1月の客室稼働率はシティホテルが10.6%、リゾートホテルが11.2%に沈んだ。人件費や維持管理費など固定費の負担は重く、業績回復は見通せない。
20年3月期末の有形固定資産は土地と建物を中心に1兆4564億円ある。プリンスホテルやリゾート施設などを広く手がけているためで、総資産に占める割合は85%と関東の鉄道大手9社で最も高い。その約4割をホテル・レジャー関連が占めている。有形固定資産回転率でみると、西武HDの前期は0.38回と関東の鉄道大手で最低水準で、旧国鉄からの資産を抱えるJR東日本の0.43回より低い。過大な資産が売り上げに結び付いていない。「不稼働資産」になっているのだ。
西武HDは、事実上の前身会社である西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載の問題を受け、2004年12月17日に上場廃止となった。堤康次郎氏の後継者である堤義明氏は一連の責任を取って辞任。後を継いだみずほ銀行出身の後藤高志氏は2006年にグループ再編を実施し、当時167カ所あったプリンスホテルの事業所を、その後10年間で約90カ所まで減らした。
西武ライオンズの売却などを求められ、投資ファンドと対立
しかし、訪日客が増え始めてから西武グループの資産の売却スピードは衰える。都心の超一等地を抱える西武グループを巡っては米ゴールドマン・サックスなど名だたる海外投資家が買収をもくろんだが、後藤氏はパートナーとして米サーベラスから06年に出資を受け入れ、二人三脚で再建を果たしてきた。
サーベラスは過去に手掛けたホテルの再建チームなどを送り込んで、全国に散らばるプリンスホテルの立て直しに奔走した。その一方で、不採算の約70の施設を売却・閉鎖するなど、リストラも敢行、筋肉質の財務体質に変えた。その結果、18年度の連結売上高は06年度比18%減の5659億円と縮んだが、営業利益は81%増の733億円と収益力を高めた。
順調に再建を果たしていた西武HDだが、サーベラスは「リストラの手を緩めるべきではない」として、西武秩父線、西武園ゆうえんちの足となる多摩湖線の廃線や西武ライオンズの売却なども求めた。これに後藤氏ら西武経営陣が反発。結局、サーベラスは17年に出資を引き揚げてしまった。