※本稿は、谷本真由美『日本人が知らない世界標準の働き方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
アメリカの富裕層は「投資」を増やす代わりに「消費」を減らす
世界の経営学者や社会学者の中には、お金持ちのライフスタイルを研究している人々がいます。収入区分や職業からアンケートやインタビューの対象となるお金持ちを探し出し、数年間にわたってライフスタイルを聞き出し、数値的な処理を施して、「お金持ちのライフスタイルの共通項」を探し出すのです。
このような研究の方法は、起業家を研究する経営学者や、特定集団の行動様式を研究する政治学者や社会学者が行っている方法です。マスコミやジャーナリストが、雑誌の売り上げや、テレビ番組の視聴率を狙い、センセーショナリズムを前面に押し出して紹介するお金持ちとは異なっています。
トマス・スタンリー博士とウィリアム・ダンコ博士は、アメリカの富裕層研究の第一人者として知られています。20年間にわたり、地理学者と協力して1万人以上の億万長者にインタビューとアンケートした結果をまとめた『The Millionaire Mind』(Gallery Books, Reprint版)(邦題『なぜ、この人たちは金持ちになったのか』日本経済新聞出版)は参考になる書籍の一つです。
この調査は、全米の国税調査対象地域から、100万ドル(1ドル=120円換算で約1億2000万円)の純資産額(持っている資産から負債を引いた額)を基準に億万長者の比率を割り出し、お金持ちのライフスタイルを丹念に調べたものです。スタンリー博士は、もともと富裕層向けのマーケティング研究を行っていましたが、その結果は驚くべきものでした。
アメリカの富裕層の84%は一代で財を築いた人々であり、そのほとんどは、中小企業の経営者だったということです。彼らの多くは普通の住宅地に住み、普通のファミリーカーに乗り、同じ配偶者と長年生活をともにし、最も気にしていることは、投資を増やす代わりに消費を減らすことでした。
ヨットもなければタワーマンションに住んでいるわけでもなく、パーティーに顔を出すわけでもありません。世間一般で想像されているような富豪のイメージとは正反対の、地味で実直な人々だったのです。