目標は「達成できそうな数字」
個人を追い込む成果主義ではないということだろうか。ちなみに玉置自身に個人としての受賞歴はないというから、勤続年数の長さは個人として突出した能力があることとリンクしているわけではないようだ。
いくら、課やチームで評価されるといっても、ノルマがきつければチームが追い込まれることになる。それは結局、個人を追い込むことになるのではないだろうか。佐藤が言う。
「年度初めに全社の売り上げ目標を決めて、それを各課に細分化して、さらに各担当チームに割り当てていきます。玉置が言っているチームとはこの担当チームのことで、2人から3人が1組になって顧客を担当しています。しかも、全社の売り上げ目標が『達成できそうな数字』なので、チームが追い込まれるということもないんです」
達成できそうな数字……。またしても、摩訶不思議な言葉の登場である。
課長時代に全員にボイコットされる大失敗
とりあえず、サンコーが個人を追い込まない会社であるとして、では、女性の処遇はどうだろうか。玉置の年齢を考えればITスキルの問題も気になるところだ。90歳という高齢で、果たして職場のIT化に追随していくことができているのだろうか。
「私は40代で課長になりました。サンコーは女性が普通に役職に登用されている会社で、いまは女性の取締役も部長も課長もいてますけれど、私が40代で課長になった当時は、まだ会社の組織がきちっとできていない時代で、マネジメントということもよくわからないまま年功で課長になったんです。
若い頃の私は融通の利かん人間でね、何でも言うたら聞いてくれるやろと思っていました。ところが決算の時期に『残業して』と言ったら、課の全員からボイコットされてしまったんです。それから試行錯誤して、『一緒にやりましょう。お願いしますね』というふうに、絶対に上から物を言わないようにしました。だから、課長とかいう意識、今でもぜんぜんないんです。みんなと一緒に成長していこうということですわ」
玉置は現在、漢字検定準一級の試験に向けて勉強中だという。90歳にして文字通り“成長”のさなかにあるというから、驚く。