つまり知事の判断で実施する協力金を、国が全面的に負担してくれるのだ。知事たちは人気取りで協力金のバラマキをさらに進めるかもしれない。時短命令違反に過料を科すことができる知事の権限拡大と合わせ、協力金の額の決め方について注視する必要がある。

店舗の実態に合わせた協力金の額をどう決めるか

一律支給で一番の問題は、店舗の実態に合わせた協力金の額になっていないという点だ。

新宿
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しかし営業実態を把握すると言っても、ことはそう簡単ではない。国会で野党が政府の一律支給を問題視し、売り上げや粗利、店の規模、従業員数で実態を把握せよというが、具体的な方法論を提示できていない。

東大大学院の肥後雅博教授は「経済センサスの『付加価値額』の考え方が、店舗の実態把握にも有効だ」という。肥後教授は元日銀マンであり、調査統計の専門家だ。

飲食店の「付加価値額」は、飲食というサービスを提供することによって新たに作り出す価値であり、先に書いた計算式の通り、売上高から原材料費や販売管理費(人件費を除く)を差し引いて算出する。

それによると、店舗ごとの従業者規模別にみた付加価値額(1日当たり)は、次の通りとなる。

従業員規模別にみた1店舗1日当たりの付加価値額
(従業者)
1~4人 0.9万円
5~9人 3.6万円

小規模な零細店舗では、協力金の6万円をはるかに下回る。
一方で、大規模店では全く足りない。

(従業者)
20~29人 13.5万円
30~49人 19万円
50人以上 36.5万円

全国には59万店の飲食店があるが、そのうち8割は、従業員が10人以下の店舗だ。統計上の一つの見方に過ぎないが、店舗の営業実態を把握する一つの方法に違いない。

問題は、従業員が居ない、一人営業の店舗は、計算上協力金が0円になることだ。その対策として、例えば一人店舗は日額1万円を支給する。従業員が20人を超える大規模店には、本来営業で得られたであろう逸失利益を、従業員の労働時間に比例して支払われる給与を参考に上乗せし支給すれば、およそ営業実態に近づけるのではないか。

この方法なら不正に取得することは起きにくい

ただし、従業員数も不正に申告することは可能だ。従業員数のみならず、売上や粗利益、店舗面積にしても、申告ベースであり偽ろうと思えば可能だからだ。

税務署に提出する確定申告にしても年一回であり、今データを利用するとなると一昨年の数字になる。店によって売り上げが大きくても薄利の店もあれば、固定費(家賃、光熱費)の割合が高い店もある。店舗面積も出店場所により、10坪で毎月600万円を売り上げる店もあるから当てにならない。

よって従業員別に付加価値額を算出する方法が理に適っている。