広島の集中豪雨から「気候変動」に関心

本業で携わる「金融」が、一般の人びと、特に貧しい人たちの生活にどうつながっているのか。LIPでそこに触れたことは、意識の変化につながりました。

「例えば、本業で『気候変動』というワードを耳にする機会が増えたのですが、今までだったら『国がこう言っていた』『みんなもそう言ってるよね』で終わっていたと思うんです。でも今は、『気候変動で海面が上昇した場合、海の近くに住む人びとの生活にはどんな影響が出るんだろう』『そこで、どういう行動を起こせばいいんだろう』といったところまで考えるようになりました」

気候変動によって自然災害が増えたり、海面の上昇で塩害が起きて農作物に被害が出たりすると、貧困を拡大させたり深刻化させたりすることにもつながります。「気候変動のような世界的な問題に対する“解像度”が上がりました」

「気候変動」というワードを意識するようになったきっかけは、本業の転勤で広島に住んでいた時に経験した、2018年の「平成30年七月豪雨」にありました。西日本を中心に広い範囲で発生した集中豪雨は、山間部の土砂を押し流し、多くの方が避難を余儀なくされ、流通の要である数多の道路が寸断されました。

「地域によってはコンビニの棚が1カ月近く空の状態だったのを覚えています。それは、人が押し寄せて買い占めが起きたからではなく、土砂崩れで物流がストップしてしまったからなんですね。建物が浸水して起きるワンタイムの経済ロスはもちろんですが、道路が元に戻るまでの数カ月間、道路が寸断されて物流が滞ったことの地元経済への影響が、とてつもなく大きかった」

インドネシアの農家も支援

気候変動による自然災害が、人びとの生活に大きな影響を与えてしまう。それを目の当たりにした経験から、清水さんはLIPで、マイクロファイナンスに加えてもう一つの活動にも参加し始めました。インドネシアのバリ島に拠点を置くsu-re.co(シュアコ)という団体と協力し、気候変動の影響を受けやすい農家の収入を安定・向上させ、持続するための仕組みづくりです。

従来の稲作よりも気候変動に強い、コーヒー豆やカカオ豆への転作支援や、電気やガスを利用できない農家に、家畜の排せつ物などから清潔なガスを作り出すバイオガスキットを提供する活動など、その支援は多岐に渡ります。清水さんたちは昨年2020年にクラウドファンディングを行い、出資者へのリターンとしてコーヒー豆やチョコレート、石鹸やアロマキャンドルといった商品を用意しました。

2007年にLIPが設立されてから、10年以上が経っています。マイクロファイナンスの支援に参加するメンバーから「お金の支援以外に、知識や技術を教える支援があってもいいんじゃないか」という声が挙がり、清水さんが携わっているsu-re.coの活動が始まりました。

「いま、地球規模で気候変動が起きていて、途上国の農家はダイレクトにその影響を受けています。ゆくゆくは、ここの製品を日本で売りたいと思っています。売り上げの一部が農家さんに還元され、かつ気候変動に関心を持つ方がひとりでも増えたら……それが現在の活動のモチベーションになっています」

写真=本人提供
2020年10月にLIPで実施した、su-re.coのコーヒー試飲会