【サイフ3】
この人物は財布を持たず、お札を直にポケットに入れ、カード入れだけを持ち歩いている。おそらく小銭は家の貯金箱に入れているのだろう。
見た目は几帳面そうな佇まいだが、この人物も貯蓄はできていないはずだ。第一、ポケットからお札を落としてしまう可能性がかなり高い。このお金に対する無頓着ぶりはこれまでお金で苦労することがなかったことを示している。おそらく、フロー型財布の持ち主同様、裕福な家に育った人物であるに違いない。
この人物のお金に対する感覚には著しい特徴がある。それは、カードの顔ぶれに如実に表れている。
通常、財布に入っているカードを一覧すると“生活の切実さ”が見えてくるものだ。スーパーや美容院のポイントカードが何枚も入っていれば、わずかでもポイントを貯めて節約に繋げようという意識が汲み取れる。
しかし、この人物が持っているのは歌舞伎カード、漫画喫茶のカード、ナナコ等々であり、消費の匂いはしても、生活臭がまったくしない。切実感がゼロなのである。
例の、サブプライムローン破綻の主人公たちは、おそらくこうした人物である。お金に対して切実な思いがないから、安易にローンを組み、いとも簡単に破綻してしまう。この人物も、人生のどこかで破綻を経験することになるだろう。
【サイフ4】
一見して、こだわりが感じられる財布である。私はいわゆる大富豪の財布をいくつも見てきたが、彼らの財布には必ず何らかのこだわりがある。それに通ずる風格が感じられる。
ドル紙幣が入っている意味はよくわからないが、お札は金額の大きいほうから順番に美しく並べられており、小銭は小銭入れに分けて入れている。この2点も、真のお金持ちに共通する特徴である。
そして、レシートが独特だ。入っているのは、タクシーのレシートが3枚のみ。タクシーでレシートを取るということは、持ち主は自営業をしているか事業家に違いないが、それ以外のレシートが存在しないのだから、おそらくタクシー以外の支払いは、すべてカード決済にしているのだろう。
クレジットカードを多用しつつ、なおかつ大富豪並みの資産を築いているとすれば、持ち主はかなり厳しくセルフコントロールができる人物。つまり、叩き上げの人生を歩んできた人物であると推測できる。財布の裏側に、シビアな生き様が透けて見える。見事な財布である。