プーチン大統領「ゾルゲのようになりたかった」

プーチン大統領は2020年10月、68歳の誕生日に際してタス通信のインタビューに応じた中で、「実は、自分は高学年のころ、ゾルゲのようなスパイになりたかった」と打ち明けた。プーチン大統領がゾルゲを敬愛していたことを公表したのはこの時が初めて。

2000年の回想録では、「子供のころスパイ映画を見て、国家保安委員会(KGB)で働くことを希望した」と述べていたが、実際にはゾルゲ事件がスパイを志す大きな動機だったことが判明した。

プーチン大統領は2000年の就任直後、モスクワ北西部にあるGRU本部を訪れた際、KGB同期のイワノフ国防相(当時)と近くのゾルゲ通りにあるゾルゲ像に献花した。ドイツ語を専攻し、旧東独に5年間スパイとして勤務したプーチン氏は、柔道を通じて日本の文化、歴史にも造詣が深い。日本で活動したドイツ人のゾルゲには、個人的な思い入れが強いようだ。

地下鉄駅の新設、歴史ドラマの放映、モスクワにも胸像が…

ゾルゲ・ファンの大統領の影響もあり、ロシアでは近年、「ゾルゲ・ブーム」のような現象が起きている。

プーチン大統領が献花したモスクワ北西部のゾルゲ像。1985年建立。(写真=ロシア軍事歴史協会ウェブサイトより)
プーチン大統領が献花したモスクワ北西部のゾルゲ像。1985年建立。(写真=ロシア軍事歴史協会ウェブサイトより)

2016年に開通したモスクワ地下鉄外環状線の新駅は「ゾルゲ駅」と命名された。近くのゾルゲ通りにちなんでいるが、ゾルゲが駅名になったのは初めて。「ゾルゲ通り」もアストラハン、ブリャンスク、カリーニングラードなど多くのロシアの都市に誕生した。一昨年以降、モスクワや極東のウラジオストク、南部のロストフナドヌーなどにはゾルゲの胸像が設置された。

在日ロシア大使館内にあるロシア人学校の正式名は「リヒャルト・ゾルゲ記念学校」だが、ゾルゲの名を付けた学校が、モスクワなどロシア各地に増えてきた。

2019年には国営ロシア・テレビで歴史ドラマ「ゾルゲ」(全12話)が放映され、尾崎秀実や愛人の石井花子役で日本人俳優が動員された。ゾルゲ事件のシンポジウムもしばしば開催されている。