ちぐはぐなドイツの対中姿勢
実は、ドイツの対中政策はまったく定まっていない。ファーウェイの5Gネットワークを採用するか否かも決まっておらず、産業界は中国での投資をさらに増やそうと懸命だ。だから、国防相がアジアの海での中国包囲網に参加すると言っている傍らで、メルケル首相はEUと中国の投資協定の締結を力強く推し進めた。
対中政策の一貫性のなさは、他のEU諸国も似たようなものだ。
しかし、今後、米国が本当に強硬な中国政策を継続するなら、EUはいずれ決断を迫られるだろう。これまでのように、政治と経済は別などという態度は許されなくなる。そうなったとき、問題は、一国の中でさえバラバラな対中政策を、EUレベルでまとめるなどということが、果たしてできるかどうかだ。
特に、これまで20年間、中国と二人三脚で富を築いてきたドイツは、それが突然、行き詰まるかもしれないという現実をうまく消化しきれず、「富はまだまだ築けるはず」という空気が、産業界では非常に強い。
日本の存在感がますます軽くなっていく
つまり、今回のバイデン大統領の希望に満ち溢れた言葉は、集団的自衛権の復活という意味では喜ばしいことだったが、他の山積した問題が減るわけではなさそうだ。中国をめぐる国際情勢も、まだまだ緊張が続く。
なお、今回の会議には、普段なら招待されている中国やロシア、そして日本が欠けていた。オンラインなのでいつもと違うことは分かるが、ただ、世界レベルでの民主主義同盟の構築を謳うなら、せめて日本だけは招かれても良かったのではないか。
特に、欧米が目指す「開かれたインド太平洋」がNATOのアジア版になるとすれば、日本もそのネットワークの中でそれなりの影響力を見せてほしいところだ。
しかし現実には、軍事小国の定めか、あるいは、安倍晋三前首相の欠場のせいか、昨今、国際舞台における日本の存在感はますます軽くなっていくようでとても悲しい。