それは本当に「得意なこと」なのか

たとえば、平均点が60点のテストがあったとします。このテストで、60点以上だった人ほど自己評価が低く、逆に60点以下だった人ほど自己評価が高くなります。結果、平均点以上の人は「自分はまだまだだ」と思って努力を続け、平均点以下の人は「自分は十分だ」と思って努力しなくなるのです。

「得意なことを仕事にしたい」と考えている人は、「自分には人より秀でた、得意なことがある」と考えているわけですが、そもそもそれが大きな間違いである可能性があります。自分で得意だと思っている時点で、じつはそれを仕事にしている人たちと比べると、平均点以下だということも十分あり得るわけです。

プロフェッショナルや挑戦し続けている人は、得意か不得意かなんて気にしていません。気にしているのは、「やりたいか、やりたくないか」よりも、「やる価値があるか、ないか」です。やる価値があるなら、好きでなくても、不得意でも、関係なくやるわけです。

長所を自分で決めつけてはいけない

人は鏡でも使わない限り、自分の顔すら確認できない生き物です。先日も、次のようなことがありました。私が講師をさせていただいている、ジャパンスピーカーズビジネスカレッジでおこなっている講座にJSBC人材アセスメントコースというものがあります。

このコースは個人のビジネス能力を正確に診断することが可能です。米軍の幹部候補を選ぶ際におこなわれていたテストが元になっていて、日本の大手企業でも幹部候補を選ぶ際に使っています。門外不出といったら大仰おおぎょうかもしれませんが、受講枠が少ないため、なかなか一般で受けることは難しく、知られていないのが現状です。

このコースを私の友人が受けたのですが、彼女の受講前の自己評価は、「共感性は高いが、情報理解する力は弱い」というものでした。ところが受講して出た結果は真逆。「共感性が低く、情報理解力が高い」というものでした。本人はびっくりしていましたが、周りの人には納得の結果でした。

思考する人
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

自分のことをわかっている、自分がなにが得意なのか理解していると思うのは、大きな間違いです。もちろん、自分で長所だと思っているところを大事にして、それを伸ばすための努力をするのはいいことです。

でも、自分で長所を決めつけず、自分の気づいていない長所を増やすことに挑戦したほうがいいと思うのです。そもそも、成果を出すには、得意なことだけでは足りないことが多々あります。とくに若いうちは、自分の得意不得意なんて、あまり気にしすぎないほうがいいでしょう。

なんでもまずやってみる。そして、自分の目的のためにやる価値があることは、好きとか得意という基準を無視して、身につけるようにしてみてください。