日本がアメリカと対等なパートナーになる日は来るのか。長編ノンフィクション『ロッキード』(文藝春秋)を出した作家の真山仁氏は「戦後、日米が対等だった時代なんて一度もない。これからは対等ではない関係を逆手にとり、賢くなるしかない」という――。(第2回/全3回)
『ロッキード』を出した小説家の真山仁さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
ロッキード』を出した小説家の真山仁さん

繰り返される45年前の構図

——ロッキード事件と同様のことが平成になり、令和になっても繰り返されているとご指摘されていますね。

その象徴が、安倍前首相とトランプ前大統領との関係です。ロッキード事件を取材していた2017年11月のことです。日米首脳会談で、安倍さんがF35戦闘機の購入を約束しました。トランプの目的は、貿易赤字解消とアメリカ国内の雇用創出だった。このニュースを知ったときに、驚きました。45年前と同じ構図じゃないかと。

ロッキード事件の発端は1972年の田中角栄とニクソンの首脳会談だとされています。ニクソンは貿易赤字解消のために、ロッキード社製の対潜哨戒機P-3Cを買うように角栄に求めた。

また2つの日米首脳会談には、国産戦闘機の開発という共通の背景があります。

60年代、70年代には、自衛隊機を純国産化しようという動きがあり、対潜哨戒機や輸送機など戦後初の純国産機の導入を目指していました。自衛隊機の国産化にこだわるのは“ゼロ戦復活”が目的ではありません。

安全保障の観点では、戦闘機の機種を複数所有するのは、世界的に常識です。とくに島国の日本では、有事で頼りになるのは戦闘機であり、実際に航空自衛隊は、安倍前総理が購入を決めたF35を含めた4機種を運用しています。

しかし今後、古い機種が退役すると、航空自衛隊はF35に頼らざるをえなくなる。自衛隊では墜落事故などのトラブルを起こした機種は原因解明まで飛行禁止になりますが、F35は日本ではオーバーホールができないので、いざというときに飛べる戦闘機がないという事態に陥ってしまう危険性が指摘されています。

「日本とアメリカが対等だった時代なんて一度もない」

にもかかわらず安倍さんは、そうした危険な事態が起こるわけはないと無邪気に考えたのでしょう。有事や国防よりも、トランプとの関係性を優先させ、いいなりになったのです。その点では、トランプはアメリカという国を象徴するわかりやすい大統領だった。アメリカ・ファーストとは、自分さえよければいい、ということですから。